マンションや土地・戸建などの不動産売却に、手数料や税金などどれくらい費用がかかるのかご存知でしょうか?
不動産を売却するということは、価値の大きいものを売るため手数料も高額になります。
「そんなに手数料がかかるの?」「いつまでにいくら現金が必要なの?」そんな悩みを解決できるように、不動産売却にかかる手数料6種類を、ひとつずつ解説していきますので最後までお付き合いくださいね。
(アイキャッチ画像出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/4228540?title=%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%94%A3%E3%80%80%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B8%E7%94%BB%E5%83%8F&searchId=1784575251)
不動産売却にかかる手数料6種類一覧表
建物や土地などの不動産売却にかかる手数料や税金などの費用と支払時期を一覧表にしてみました。以下の通りです。
費用名 | 費用の目安 | 支払時期 |
①仲介手数料 | (売却額×3%+6万円+消費税※売却価格が400万円超える場合 | 売買契約時と決済後 |
②印紙税 | 1,000~6万円※売却金額により異なる | 売買契約書の作成時 |
③抵当権抹消費用 | 1,000~3万円程(司法書士へ依頼する費用) | 移転登記時 |
④住宅ローン返済手数料 | 1~3万円(一括繰り上げ返済にかかる金融機関への手数料) | ローン返済時 |
⑤譲渡所得税・所得税・住民税 | ※売却した年の1月1日での保有期間によって異なる | 確定申告後 |
⑥その他費用(必要に応じて) | ※費用項目により異なる | 項目により異なる |
それでは、不動産売却にかかる6種類の手数料を紹介します。特に高額な仲介手数料から順に詳しく解説していきますね。
不動産売却にかかる手数料①仲介手数料
仲介手数料とは、不動産会社に物件の販売活動を依頼して無事に売れた場合に仲介業務の報酬として支払われる費用のことで、「宅地建物取引業法」によって定められています。仲介手数料の計算式は以下の通りです。
売買価格 | 仲介手数料の上限 |
200万円以下の場合 | (売却価格×5%)+消費税10% |
200万円を超えて400万円以下の場合 | (売却価格×4%+2万円)+消費税10% |
400万円を超える場合 | (売却価格×3%+6万円)+消費税10% |
参照:国土交通省ホームページ宅地建物取引業法 仲介手数料に含まれるのは通常業務で発生する費用のことで、物件情報サイトに情報を載せたり、チラシ配布などの営業活動を指します。
例えば、3,000万円の家を売却する場合の仲介手数料を計算すると(3,000万円×3%+6万円)+消費税10%=105万6千円になります
仲介手数料を支払うタイミングは一般的に2回に分けられます。1回目は契約書にサインして売買契約が成立した時です。買主から売主へ手付金が支払われるので、そこから不動産会社に仲介手数料の半額を支払います。
2回目は物件の引き渡し時です。買主から売主へ購入代金が支払われ、物件の引き渡しが完了したタイミングで残りの全額を支払います。
測量や建物の解体など特別な活動は別途費用が請求されます
不動産売却にかかる手数料②印紙税
印紙税とは、不動産を売却する際に売主と買主との間で交わす不動産売買契約書に対し、その売買価格に応じて印紙を貼ることで納める税金のことです。
2014年4月1日から2022年3月31日までの間に作成された不動産契約書に張り付ける印紙は、軽減税率の適用を受けることができます。軽減税率を受けた際の印紙税は次のようになります。
契約金額 | 本則課税 | 軽減税率 |
50万円を超え 100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え 1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円を超え 5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円を超え 1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
参照:国税庁ホームページをご覧ください 印紙税は契約書1通に付き課税されます。
売主が売買契約書を1通保管する場合、買主と併せて売買契約書が2通になるので、2通分の印紙代がかかります。印紙税の支払いは、売買契約書の作成時に必要です。
印紙を貼る必要があるのに貼っていなかった場合、また印紙を貼ったけれど消印をしなかった場合も、3倍の額の過怠金が課されるので注意が必要です
不動産売却にかかる手数料③抵当権抹消費用
抵当権抹消費用とは、ローンを完売した際に抵当権を抹消するためにかかる費用です。抵当権とは、住宅ローンをを組む時に、金融機関が不動産を担保として設定する権利をいいます。
抵当権付きの物件は住宅ローンを完売しない限り、売り主が勝手に売却できません。抵当権を抹消したら登記情報を変更しますが、その時に必要な手数料が抵当権抹消費用です。
費用は個人で抵当権の抹消を行う場合、1不動産あたり1,000円の登録免許税のみですが、重要な手続きのため司法書士の方に依頼する方が安心でしょう。
費用は、登記にかかる登録免許税と依頼する司法書士の方へ手数料を含めて5,000~2万円程度です。支払いは移転登記時にします。
不動産売却にかかる手数料④住宅ローン返済手数料
売却する不動産を購入する時に、住宅ローンを利用して残債がある場合は、売却までの間に完済しておかなくてはなりません。この場合、金融機関に対して一括繰り上げ返済する必要があり、それには手数料がかかります。
繰り上げ返済の手数料は、窓口の対面または窓口の専用テレビやパソコンで行う場合、ネット経由で行う場合で異なります。三菱UFJ銀行と、三井住友銀行の場合の手数料の違いを比べてみました。
銀行名(2021年6月現在) | 窓口(対面) | 窓口の専用テレビ・パソコン | ネット経由 |
三菱UFJ銀行 | 33,300円 | 22,200円(テレビ窓口) | 16,500円 |
三井住友銀行 | 22,200円 | 11,100円(専用パソコン) | 5,500円 |
三菱UFJ銀行の場合、窓口(対面)とネット経由での差額が16,800円、三井住友銀行の場合も窓口(対面)とネット経由での差額が16,700円になります。安く済ませたいならネット経由の繰り上げ返済がおすすめです。
各金融機関によって条件や手数料など異なりますので、事前の確認が必要になります。支払いはローン全額返済の時です。
不動産売却にかかる手数料⑤譲渡所得税・所得税・住民税
不動産を売却した時に生じた売却益は譲渡所得として確定申告が必要です。この譲渡所得にかかる所得税は他の所得とは分離して課税し、税率も異なります。譲渡所得の計算式は次のようになります。
譲渡所得(譲渡益)=不動産売却価格-(不動産所得費+不動産譲渡費用)
譲渡所得は、売却価格から「不動産購入のため要した費用」と「不動産売却のために要した費用」を差し引いた金額です。譲渡所得に利益が出る場合は、さらに所得税と住民税がかかります。
また、譲渡所得にかかる税率は物件の所有期間が5年を超えているかどうかで、次のように変わります。
種類 | 対象期間 | 税率 |
短期譲渡所得 | 所有期間5年以下の土地・建物 | 39.63%(所得税30.63%・住民税9%) |
長期譲渡所得 | 所有期間5年を超えるの土地・建物 | 20.315%(所得税15.315%・住民税5%) |
物件の所有期間によってかかる税率がずいぶん異なりますので、自分の場合はどちらなのか確認が必要です。支払いは確定申告後になります。
不動産売却にかかる手数料⑥必要に応じて発生するその他の費用
ここまで、不動産売却にかかるおもな手数料や税金について説明をしてきましたが、その他に必要に応じて発生する可能性のある費用を5つ紹介します。
- 測量費用
- 解体費用
- 売買契約関連書類の発行費用
- ハウスクリーニング費用
- 引っ越し費用
測量費用
不動産を売る場合、買主から売却範囲の確認のため、境界確認書や確定測量図を求められる場合があります。境界が定まっていない不動産を売却する際は、確定測量が必要です。
その際の費用は仲介手数料に含まれず、売り主負担となるため注意してください。費用は50万円~100万円ほどです。
解体費用
戸建てを解体し、更地として売却する場合には解体費用が必要です。解体費用は解体する家の構造や建材によって変わります。
木造、鉄骨、鉄筋コンクリートと頑丈さが異なりますので、廃棄しづらい建材になればなるほど、解体する費用は高額になります。
解体費用は木造4~5万円/坪、鉄骨造は6~7万円/坪、鉄筋コンクリート造なら6~8万円/坪というのが一つの目安です。
売買契約関連書類の発行費用
不動産を売却するには書類がいくつか必要で、例えば境界確認書、固定資産税評価書、住民票などの提示を求められる可能性があります。
手元にない場合は、役所で再発行しなくてはなりません。再発行の相場は書類の種類によって異なりますが、だいたいの相場は300円程度です。
ハウスクリーニング費用
不動産の売却に向けて部屋をきれいにしておきたいという人は、ハウスクリーニングをしておきましょう。同じ住宅でも、住んでいるかどうかで費用相場は異なります。
また部屋の広さでも相場は変わり、広いほどコストは高くなります。ハウスクリーニングの費用の相場は約5~20万円程度です。
引っ越し費用
住んでいる家やマンションを売却する場合は、引き渡すまでに新居に引っ越ししなくてはいけません。引っ越し費用は、荷物の量や引っ越す距離にとって異なります。
4~5人家族であれば、15~20万円程度の金額を見ておいた方がいいでしょう。売却してから新居を購入しようとする場合、仮住まいへの引っ越し費用と、また新居へ引っ越す費用の2回発生するので注意が必要です。
不動産売却にかかる仲介手数料を安く抑えるコツ
不動産売却にかかる手数料を、少しでも安く抑えたいを思っている人は多いのではないでしょうか。ここでは、金額の大きい仲介手数料を安く抑えるコツを紹介します。
交渉して仲介手数料を安くする
仲介手数料は下限額の決まりはなく、手数料を下げることは不動産会社の自由なので仲介手数料を割引する会社もあります。ただ無理な値引き交渉をすると、熱心に販売活動をしなくなる可能性があります。
仲介手数料を安くしたいのであれば、値引きをしても熱心に活動してくれる不動産会社に対しての理由が必要です。例えば「1社のみに仲介を依頼する」といった専属専任媒介契約を結ぶことは有効な手段になります。
手数料が無料の不動産会社に依頼する
不動産会社の中には、仲介手数料は無料となるケースがありますが、このような会社は1つの不動産会社が売り主と買主の両方の仲介を担当するという「両手取引」をおこなっています。
両手取引によって買主から仲介手数料を得ているため、売り主からの手数料を無料にすることができます。しかし、両手取引では最高額での不動産売却は難しく、結果的に損してしまう可能性もあります。
不動産売却にかかる税金を安く抑える特例4つ
不動産売却で発生する税金に対して、一定の条件を満たせば負担が軽くなる特例が主に4つあります。それは以下の通りです。
- 3,000万円特別控除
- 10年超所有軽減税率の特例
- 特定居住用財産の買い替え特例
- 損益通算
3,000万円特別控除
家を売却して売却益が出た場合に、譲渡所得から3,000万円までが控除できる特例です。つまり、家を売却して得た利益が3,000万円以下であれば税金がかかりません。
3,000万円特別控除の適用条件や、また適用されないケースが細かくあるので確認が必要です。
10年超所有軽減税率の特例
不動産の所有期間が10年以上の場合、3,000万円の特別控除との特例として、併用して軽減税率の特例を適用できます。この制度で控除を受けると「特定居住用財産の買い替え特例」は利用できなくなります。
特定居住用財産の買い替え特例
買い替え特例とは不動産を売却した代わりに、居住用不動産を購入した時に活用できる制度です。一定の条件を満たすことで、譲渡利益への課税が「繰り延べ」できます。
買い替え特例は、前述した3,000万円特別控除との併用はできません。
損益通算
マイホームを売って赤字になることもあります。売却した金額では残った住宅ローンを返済できない場合に救済するのが、「居住用不動産の譲渡損失の損益通算と繰越控除」です。
この特例を受けると、売却の損失と他の所得との間で損益通算ができます。その分課税対象となる所得金額が抑えられ税金を少なくできます。
手数料を事前に知って不動産売却を成功させよう!
不動産売却は、さまざまな手数料や税金などの諸費用がかかるので、事前にしっかりとした資金計画を立てることが大切です。
例えば、2,000万円の不動産売却した場合、手数料はいつまでに準備するのかを表にしてみました。
費用名 | 費用の目安 | 支払時期と金額 |
①仲介手数料 | 2千万円×3%+6万円+消費税=726,000円 | 売買契約時:363,000円 決済後:363,000円 |
②印紙税 | 1万円 | 売買契約書の作成時:1万円 |
③抵当権抹消費用 | 司法書士へ依頼する場合は3万円程 | 移転登記時:3万円程 |
④住宅ローン返済手数料 | 三菱UFJ銀行のネット経由で16,500円 | ローン返済時:16,500円 |
⑤譲渡所得税・所得税・住民税 | 売却した年の1月1日での保有期間によって異なる | 確定申告後 |
⑥その他費用(必要に応じて) | 費用項目により異なる | 費用項目により異なる |
紹介した手数料を総計すると(⑤売却後に支払う税金と⑥その他の費用は除く)782,500円程必要です。また、売却した金額を全額受けとる前の支払いは、419,500円程になるので事前に準備が必要です。
不動産を売却した時に、いつまでにどれだけ現金を払わなくてはいけないのか、知っておけばいざという時に困らなくて済みますね。また、少しでも高く売れれば利益が大きくなり支払いも楽になります。
手数料や税金が少しでもお得になるように、またプラスになったお金でワンランク上のマイホームが手に入りますようにお役に立てれば幸いです。