あなたは有給休暇がどんな条件で付与されているか知っていますか?「仕事が忙しいし、上司もとらないから有給休暇は使えない」とあきらめてしまっていないでしょうか。
まわりの人に迷惑がかかりそうだし、仕事がもっと忙しくなるので、有給休暇をとって良いのか迷ってしまいますよね。「うちの会社じゃ無理」とあきらめてしまう気持ちもよくわかります。
しかし、国が有給休暇の取得を促進し、とりやすくする条件を作っているのをご存じでしょうか。この記事では、その条件について説明していきます。
質の高い仕事を継続的に行うために、有給休暇を活用してメリハリのある生活を目指しましょう。そのためにも、ぜひ最後まで読んでみてください。
(アイキャッチ画像出典:https://www.pakutaso.com/20190853227post-22721.html)
有給休暇が付与される条件とは
有給休暇は、以下の2つの条件が満たされた場合に、10日間付与されます。
- 半年間継続して雇われている
- 全労働日の8割以上を出勤している
その後は、10日付与された日から1年後に「11日」が付与され、1年ごとに付与日数が増えていきます。継続勤務年数と付与日数の関係についてまとめたのが以下の表です。
継続勤務年数(年) | 付与日数(日) |
0.5 | 10 |
1.5 | 11 |
2.5 | 12 |
3.5 | 14 |
4.5 | 16 |
5.5 | 18 |
6.5以上 | 20 |
勤続年数が6年半以上になると、その後は毎年20日の有給休暇が付与されます。
パートや派遣社員などの場合は上の表を基準として、労働日数に比例する形で付与されます。つまり、社会人として半年以上継続して働けば、有給休暇を取得することができるのです。
有給休暇の取得促進のため、定められた3つの条件とは
日本で有給休暇のルール作りをしているのは厚生労働省です。厚生労働省は有給休暇の取得を促進するために、以下の3つの条件を作っています。
- 毎年5日の有給休暇取得義務
- 使用者による有給休暇取得の時季指定
- 有給休暇の計画的付与制度
平成31年4月に労働基準法が改正され、いわゆる「働き方改革」が進められています。働き方改革は長時間労働や過労死の問題を解決し、「労働者にとっての働きやすさ」を追究する取り組みです。
そのような取り組みがなされていることを意識しながら、次の章から3つの条件について見ていきましょう。
厚生労働省の調査では、令和2年の有給休暇の平均取得率は56.6%となっています。しかし、そんなにとれていると実感する人はおそらく少ないでしょう。
有給休暇をとれる人はしっかりとれて、とれない人は全くとれないという現状が、平均取得率56.6%という数字から推測できるのではないでしょうか。
条件① 毎年5日の有給休暇取得義務
有給休暇の取得を促進する条件の1つ目は「毎年5日の有給休暇取得義務」です。有給休暇が10日以上付与されている全ての労働者は、毎年必ず有給休暇を5日取得するように決められています。
毎年5日の有給休暇取得は「義務」なので、違反した場合には罰則があります。違反すると会社は「労働者1人あたり30万円以下の罰金」などが科せられるのです。
また、有給休暇を取得する時季は「労働者が自由に決められる」というのが基本的な考え方になります。
条件② 使用者による有給休暇取得の時季指定
有給休暇の取得を促進する条件の2つ目は「使用者による有給休暇取得の時季指定」です。会社は労働者の意見を聴き、その意見を尊重した上で、有給休暇を取得する時季を指定することができます。
上の章で「有給休暇を取得する時季は労働者が自由に決められる」と説明しました。しかし、会社は業務上やむを得ない事情がある場合、有給休暇の取得時季を変更することができるのです。
仕事には繁忙期や納期があり、会社も仕事を継続的に進めなければいけません。有給休暇を取得するためには、ある程度会社との歩み寄りが必要になります。
条件③ 有給休暇の計画的付与制度
有給休暇の取得を促進する条件の3つ目は「有給休暇の計画的付与制度」です。
有給休暇の計画的付与制度は「確実に取得が必要な5日間」を除いた残りの有給休暇を、計画的に割り振り取得させることができる制度です。計画的付与制度を使用するには、労使協定の締結が必要になります。
計画的付与制度の具体的な活用法としては、夏休みや年末年始の休みに有給休暇を加えて連休を増やすことが考えられます。
また、休日と休日の間に出社日がある場合、計画的付与制度を使って出社日を休みにし大型連休にすることも可能です。
労使協定とは、会社と労働者の間で書面で交わされる協定のことを言います。代表的なのは、残業に関する「36協定」などです。
この場合の「労働者」とは、労働組合があればその代表者、労働組合がなければ労働者の過半数を代表する者のことを言います。
有給休暇を「半休」として取得できる条件は?
厚生労働省は「労働者にとっての働きやすさ」を追究し、働き方改革を進めています。有給休暇は「心身の疲労回復」などが目的なので、1日単位での取得が原則です。
では、有給休暇を「半休」として取得したい場合は、どのような扱いになるのでしょうか。結論から言うと、1日の有給休暇と同じように「確実に取得が必要な5日間」に含められてカウントされます。
ただし、「半休」という取得方法が可能かどうかは会社によります。「半休」は労使協定の締結が必要ないので、会社が認めているかどうかがポイントになるのです。
「半休」は有給休暇のとりやすさに関することなので、自分の会社が「半休」を認めているかどうか確認してみてください。
有給休暇を「時間休」として取得できる条件は?
有給休暇には「半休」と同じように「時間休」として取得する方法も考えられます。では、「時間休」として取得したい場合は、どのような扱いになるのでしょうか。
「時間休」は労使協定の締結が必要で、締結している場合でも「年5日の範囲内」に限定されます。なぜなら、時間休は「確実に取得が必要な5日間」の中には含められないからです。
「半休」と「時間休」の扱いについて、まとめると以下の表のようになります。あなたの会社で「半休」や「時間休」の取得が可能かどうか、この機会に確認してみると良いでしょう。
労使協定の必要性 | 日数の限定 | 「確実に取得が必要な5日間」に含まれるか | |
半休 | 不要 | 有給休暇の日数 | 含まれる |
時間休 | 必要 | 年5日 | 含まれない |
有給休暇についてよくある疑問
今まで説明してきた内容以外でも、有給休暇についての疑問があるので説明していきます。よくある疑問としては、以下の3つがあげられるのではないでしょうか。
- 理由を会社に言う必要があるか?
- 有給休暇は繰り越しできるか?
- 有給休暇は買い取りできるか?
理由を会社に言う必要があるか?
会社に有給休暇の理由を伝える必要はありません。もし聞かれたとしても「私用」と答えれば大丈夫です。
これは厚生労働省の「有給休暇の取得時季は労働者が自由に決められる」という原則から来ています。しかし、会社にも業務上の都合があるので、時季の変更をお願いされる場合はあるでしょう。
有給休暇は繰り越しできるか?
有給休暇の失効期限は2年です。次の有給休暇付与時に20日以上、有給休暇が残っている場合は、20日を上限として繰り越すことができます。
そのため、勤続年数が長い人は最大40日間の有給休暇があることになります。
有給休暇は買い取りできるか?
有給休暇の買い取りは原則できません。しかし、例外としてできる場合もあります。
それは、消滅してしまう有給休暇を会社が買い取ってくれたり、退職時の扱いとしてやむを得ず買い取ったりする場合です。一般的な状況ではできないと覚えておきましょう。
有給休暇を取得するために、あなたがすべき行動
有給休暇の付与条件などを知り有給休暇をとりたいと思っても、会社や上司の意識が変わらないと難しい状況の人も多いでしょう。
ここでは、有給休暇の取得を目指して、あなたがすべき行動について紹介します。
- 与えられた仕事を確実にやり切る
- 計画を立ててスケジュールを調整する
- まわりの信用を得る
与えられた仕事を確実にやり切る
仕事が忙しすぎて残業続きだと、とても有給休暇が欲しいとは言い出せません。できるだけ効率化をはかり、仕事を確実にやり切ることが必要です。
与えられた目の前の仕事だけを見ていては、仕事をこなすだけで時間が過ぎてしまいます。
「次はもっと短時間で処理できるようにする」「そもそもやらなくて良い業務をやめる」など、先のことを考えて行動していきましょう。
計画を立ててスケジュールを調整する
有給休暇の取得は計画的におこなう必要があります。仕事が落ち着く時期を事前に確認して、そこに向けて準備しましょう。
事前にまわりの人に伝えたりするなど、業務に支障が出ないようにすることも重要です。まわりの人に迷惑をかけないようにくれぐれも注意しましょう。
まわりの信用を得る
あなたが「仕事を一生懸命頑張っている」という評価を得られていれば、まわりの人も有給休暇の取得を前向きにとらえてくれます。
「日頃頑張ってるんだからゆっくり休んで」と、上司などから言われるような勤務態度を目指しましょう。「信用されること」は何をするにも有利に働きます。
まとめ:有給休暇の条件を理解し、しっかり活用しよう
この記事では有給休暇の付与や取得の条件について説明しました。繰り返しになりますが、国は有給休暇の積極的な取得を推奨しています。
上司や同僚も、本当は有給休暇をとりたいと考えているかもしれません。仕事に対する責任感や立場上、言うことができないでいるのだと思います。
よりよい会社を作るためには、社員も積極的に意見をだして議論することが必要です。社員が何も言わなければ、会社にとって都合の良いことばかりが「あたり前」とされてしまいます。
この記事を読んだことをきっかけに、有給休暇について上司や同僚との認識を再確認してみてください。会社も社員も幸せになる働き方を考えて、有給休暇を活用できるよう行動していきましょう。