私たちの生活において、身近な歯医者さん。一般的に、「歯科医師」と呼ばれるこの仕事ですが、実は「お医者さん(医師)」と異なった仕事だということをご存知でしょうか?
「考えてみると歯科医師のことをよく知らない」「お医者さんとの違いは何?」「歯医者さんで働いている人はみんな歯科医師?!」と疑問を抱いてしまいますよね。
この記事を読めば、これらの疑問を解決することができます。また、「歯科医師の目指し方」や「年収」など、歯科医師になるためにおさえておきたいことについて知ることができるでしょう。
「歯科医師」に興味をもったあなた。ぜひ、最後まで読み進めてみてください。
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歯科医師は「口の中を専門に診る医師」
歯科医師は「口の中を専門に診ているお医者さん」です。具体的には、虫歯や歯の周りの病気に関する治療や予防指導をしています。
口の中を専門に診て治療をしている医師なので、歯科治療以外の医療行為はできません。内科や外科、耳鼻科などの医師とは異なるため、それらに関する治療や医療行為はできないのです。
逆をいえば、歯医者さんで行われている口の中に関する治療は歯科医師だけが行うことができます。麻酔に関しては、歯の治療をするためのものであれば歯科医師が行うことが許されています。
【歯科医師の仕事①】「治療」は全て歯科医師の仕事
歯科医師が主に行っている仕事は、「口の中を専門に診て治療をすること」です。歯や口の中に関する「治療」と呼ばれる業務は、全て歯科医師が担っています。
- むし歯の処置
- 入れ歯、詰め物や人工歯、差し歯などの製作と装着
- 歯並びの矯正
- 抜歯やインプラントなどの外科的治療
- 口の中の腫瘍治療
また、「保健指導」や「健康管理」も歯科医師の仕事の一つ。治療以外に、歯の健康を保つためのサポートも担っているのです。
【歯科医師の仕事②】役職で2倍も変わる給料の実態
将来、歯科医師を目指したいと考えた場合に「給料」は気になることの一つではないかと思います。歯科医師の平均年収は562.2万円。
あくまでも平均年収なので、勤める病院や役職によって大きく異なってくるでしょう。実際に、役職が違うと年収が2倍以上違うケースもあります。
- 歯科診療所の院長:年収約1,430万
- 勤務の歯科医師:年収564万
また、歯科医師はサラリーマンよりは年収が高く、他の専門医(内科、外科、耳鼻科など)と比べると年収は低い傾向にあります。
- サラリーマン:年収約441万
- ほかの専門医師:年収約1,102万
【歯科医師になるには①】国家資格「歯科医師免許」が必要
歯科医師になるには、国家試験に合格して「歯科医師免許」を取得しなければなりません。
歯科医師免許を取得した後に、研修施設として指定された病院や治療院などで臨床研修と呼ばれる1年以上の現場研修が必要です。
歯科医師免許は、他の医師とは違って診療科ごとに取得する必要はありません。身近な4科(歯科、歯科口腔外科、矯正歯科、小児歯科)は歯科医師免許があれば診察ができます。
【歯科医師になるには②】働くまで7年以上かかる
歯科医師を目指した場合、医師として働けるようになるまで最短で7年かかります。
6年(大学での勉強)+1年(現場研修)=7年
まずは、6年制の「大学の歯学部」または「歯科大学」で勉強する必要があります。全身に関する医学を学び、口の中に関することに特化した歯学の勉強をします。
歯科医師免許を取得した後は、病院や歯科医院で1年以上の臨床研修と呼ばれる現場研修を行い経験を積まなくてはなりません。
自分で歯科医院を開業する場合も同様です。歯科医師免許を取得するだけではなく先述した通り7年間の経験を積む必要があるでしょう。
【歯科医師になるには③】必要な学費は600万円以上
歯科医師を目指す場合には、大学の歯学部か歯科大学で勉強する必要がありますが、学費は最低でも600万円以上かかります。
学費が高い理由は2つ。「歯学部の学費は、一般の大学よりも高い」「歯学部や歯科大学は6年制である」ということです。
一般の大学よりも学費が高くなるのは、医学や歯学を学ぶために必要な施設や実習に費用がかかるからです。また、歯学部や歯科大学は4年制ではなく6年制なので、より学費がかかることが分かります。
私立の歯科大学に進学した場合は、国公立の大学よりも学費が高くなるでしょう。
国公立の歯科大学 | 約350万円 |
私立の歯科大学 | 約1,800万〜3,000万 |
上記の学費に加えて実習器具(約200万円)や教科書代(約50万円)なども必要になるので、約600万円の学費が必要になります。
歯科医師と医師は同じ?!2つの仕事の違い
「歯科医師」と「医師」…。同じ「医師」なのですが、実は異なる国家資格が必要です。
医師は医学部を卒業した人が、歯科医師は歯学部を卒業した人がなれますが、勉強する学部や学科が違うだけではなく、異なる国家試験を受ける必要があります。
つまり、医師の国家資格を持っていても、歯科治療をすることはできません。病気の手術や治療をする際にも、歯の治療だけは必ず歯科医師が行わなければいけないのです。
歯科医師と医師の違い | ||
歯科医師 | 医師 | |
大学の学部学科 | 歯学部歯学科 | 医学部医学科 |
国家資格 | 歯科医師免許 | 医師免許 |
診察箇所 | 口の中を専門に診察 | 身体全身を対象にして診察 (「内科」「外科」「耳鼻科」など) |
年収 | 562.2万円 | 1,102万円 |
勤務先や役職によって年収は大きく変わるので一概には言えませんが、年収にも違いがあることが分かりますね。
見分けが難しい歯科医師と歯科衛生士の違い
歯科医師は「口の中専門の医師」に対して、歯科衛生士は「口の中をケアする専門家」です。
- 歯のクリーニング
- 保険指導
- 歯科医師のアシスタント
「歯科衛生士」という国家資格の取得が必要になりますが、歯科医師のように「歯を削る」「診察をする」といった治療行為はできません。
また、歯の治療を行うためのレントゲン撮影を認められているのは歯科医師だけです。歯のクリーニング後の最終確認やチェックは歯科医師が行っています。
歯科医師と歯科衛生士の違い | ||
歯科医師 | 歯科衛生士 | |
学部学科 | 歯学部歯学科 | 歯科衛生士養成機関 (専門学校、短期大学、大学) |
国家資格 | 歯科医師免許 | 歯科衛生士 |
主な仕事 | 口の中専門の治療 保険指導 |
歯のクリーニング 保険指導 歯科医師のアシスタント |
年収 | 562.2万円 | 360万 |
歯科衛生士は、歯科医師よりもできることの範囲が限られています。また、治療行為ができないので、自分の歯科医院を開業することはできません。
歯科医師の見習いが歯科助手?!仕事の違い
「口の中専門の医師」である歯科医師を支えるのが歯科助手。歯科医院の受付事務や診療するのに必要な雑務を歯科助手が担っています。
歯科助手になるために国家資格は必要ありません。また、歯科衛生士と同様に医療行為を行うことはできません。
あくまでも歯科助手の仕事は、歯科医師や歯科衛生士が「歯の治療」「歯のケア」を滞りなく行えるためにサポートすることだといえるでしょう。
歯科医師と歯科助手の違い | ||
歯科医師 | 歯科助手 | |
大学の学部学科 | 歯学部歯学科 | 特になし |
国家資格 | 歯科医師免許 | 特になし |
主な仕事 | 口の中専門の治療 保険指導 |
受付事務、雑務 |
年収 | 562.2万円 | 300万円 |
歯科助手になるために必要な資格や免許は特にないので、未経験でも歯科助手として働いている人は多くいます。
ただ、歯科助手にも様々な専門知識が求められるので、日本歯科医師会や民間団体が認定する民間資格が多くあります。
歯科医師は「口の中専門のお医者さん」まとめ
この記事では「口の中を専門に診ているお医者さん」である歯科医師について紹介しました。
- 歯や口の中に関する「治療」と呼ばれる業務は、全て歯科医師が担っている
- 歯科衛生士や歯科助手は治療行為ができない代わりに歯のケアや保険指導、受付事務など、歯科医師の手が回らない部分をサポートしている
- 歯科医師と他の医師は全く違うもの
- 高校卒業後の進むべき進路が違う
- 国家資格が違う
- 歯科医師が行う治療は、他の医師免許を持っていても行えない
歯科医師になるために7年の勉強と経験、そして費用が必要になります。歯科医師を目指す場合には、覚悟を持って勉強し続けることが大切になるでしょう。
どんな仕事でも同じですが、長年の勉強と努力が必要な仕事の一つであるといえますね。
そんな素敵な仕事である「歯科医師」を目指せる学校は、全国に29校あると言われています。良かったら参考にしてみてください。
- 参考サイト:歯科医師養成課程を持つ大学(歯科大学・歯学部)
- 参考サイト:マイナビ進学「歯科医師を目指せる学校」
- 参考サイト:ベスト進学ネット「歯科医師 学校」