「不動産投資は節税になる」この言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
確かに、不動産投資のメリットとして節税効果はあります。しかし、節税効果は最初の数年しか続きません。
このように、不動産と節税の関係について知らないと思わぬ損害を負う可能性も。
この記事では、抑えておくべき不動産投資と節税の関係について解説していきます。節税目的の不動産投資をお考えの方はぜひ参考にしてください。
出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/4491198?title=%E4%BD%8F%E5%AE%85%E3%81%AE%E8%A8%88%E7%94%BB%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B8&searchId=35358234
不動産投資は本当に節税になるの?
不動産投資で節税を期待できるのは、サラリーマンが副業で行う場合です。よって、本業で不動産投資をしている人は節税より売却益や運用益を意識して行ってください。
なぜ、副業だと節税効果が期待できるのか。それは、不動産投資で出た赤字を給与所得と合算して所得税や住民税の課税対象額を減らせるからです。
これを、損益通算といいます。今後たびたび出てくる言葉なので、覚えておいてください。
不動産投資と節税のメカニズムは、必ず最初に理解しておきましょう。
不動産投資で行う詳しい節税シミュレーション
上述したとおり、不動産投資は本業の給与所得と合算して所得税や住民税の課税対象額を減らすることで、節税効果を生みます。
では、給与年収700万円で所得税のシミュレーションをしてみましょう。※令和2年より給与所得控除が変更になりました。
不動産投資をしていない場合
課税される所得額 税率 控除額 1,000円から1,949,000円まで 5% 0円 1,950,000円から3,229,000円 10% 97,500円 3,300,000円から6,949,000円まで 20% 427,500円 6,950,000円から8,999,000円まで 23% 636,000円 9,000,000円から17,999,000円まで 33% 1,536,000円 18,000,000円から39,999,000円まで 40% 2,796,000円 40,000,000円以上 45% 4,796,000円 出典:国税庁HP
年収 | 700万 |
基礎控除 | 48万円 |
給与所得控除 | 180万円(700万×10%+110万) |
社会保険料控除 | 108万(給与収入×14.4) |
課税所得 | 364万円 |
所得税 | 30万500円(364万×20%-42万7,500) |
不動産投資で100万円の赤字がある場合
課税所得 | 264万円(364万-100万) |
所得税 | 16万6500円(264万×10%-97,500) |
この結果、不動産投資で100万赤字があると13万4000円もの節税になりました。
住民税も所得税と同様に損益通算を行えるので節税が見込めます。
ここまでの計算でお気づきの方もいるかもしれませんが、不動産投資は赤字の幅が大きいほど、節税効果も大きくなります。逆に赤字額が減ればそれだけ節税効果は生まれにくいのです。
これが、不動産投資の節税効果が長続きしない原因なのです。次項から、赤字額を大きくする要因の減価償却費について解説していきます。
不動産投資で覚えておくべき減価償却費
不動産投資で節税したければ、覚えておくべき経費があります。それは、減価償却費です。
減価償却費とは、購入代金を使用期間によって分割して経費計上することをいいます。
これは、購入物件の構造でどのぐらいの期間使用できるかにもよります。以下は、法律で定められた法定耐用年数です。
鉄筋コンクリート | 耐用47年 |
鉄骨鉄筋コンクリート | |
鉄骨造 | 34年 |
軽量鉄骨造 | 19年 |
木造 | 22年 |
この年数に基づいて、減価償却期間を算出して経費計上します。この減価償却期間が使用期間となります。
減価償却費は、あくまでも帳簿上で出る経費であり実際に支出されるものではありません。減価償却費は、初年度が一番高く、不動産の価値の低下とともに減少していきます。
そのため、計上できる赤字が年々減っていくため節税効果も薄れていくのです。節税において減価償却費は最も大切なことなので、覚えておきましょう。
節税できる税金の種類
ここまでは、所得税や住民税をメインに取り上げてきました。しかし、2つ以外にも節税ができる税金があります。それは、相続税と贈与税です。
相続税と贈与税の違い
遺産を継承した相続人または遺贈を受けた人が納める税金。相続人、遺贈人は相続の開始を知った日の翌月から10か月以内に申告と納税をしなければならない。
その年の1月1日~12月31日までで個人から110万円をこえる財産をもらった場合に納める税金。
両者の大きな違いは、生前に意図してもらっているか、死後に相続するかです。似ているようで、違っているので混同しないようにしてください。
相続税、贈与税の計算方法
不動産投資は、相続税を節税することができます。不動産の相続税評価額は、土地は路線価、建物は固定資産評価額を基準としています。
固定資産評価額は、実際の不動産の価格よりも低い評価になります。
さらに、投資用で貸家とすると土地は1割~3割、建物は3割ほど評価が下がります。これは、貸家だと入居人数、つまり稼働率を元にして評価額が算出されるからです。
結果、不動産の評価額が減って相続税や贈与税を抑えることができます。
不動産投資の節税効果がなくなるタイミング
節税効果が薄れるときは、不動産投資が黒字になったときです。何回も説明していますが、不動産投資の節税は、赤字額を給与所得と損益通算をして課税所得を減らして行います。
つまり、赤字を出さなければ節税になりません。黒字になると逆に納税義務が発生します。しかし、本来なら不動産投資は黒字を出すことが目的なはずです。
節税ばかりにこだわりすぎて、本来の目的を見失わないようにしてください。
不動産投資で節税するときの注意点
不動産投資で節税するためには、赤字経営をしなければなりません。しかし、赤字経営にはリスクがつきものです。以下でそのリスクについて解説します。
銀行融資が受けにくくなる
赤字経営は、銀行の融資が受けにくくなります。不動産投資は多額の資金が必要になるため、銀行の融資を受けて行っている人は多いと思います。
さらに、建物の老朽化で追加の修繕などが必要になればさらなる融資を検討するでしょう。
しかし、赤字経営が続いていると融資の審査が通りにくくなります。修繕をしたくてもできない状況になりかねません。そのため、空室が生まれて収入が見込めず、さらなる赤字が発生してしまいます。
赤字経営を続けるなら、銀行の融資を受けにくいことを想定して、自己資金を事前に用意しておきましょう。
物件選び
不動産の物件選びには特に注意してください。赤字経営ばかり考えて、賃貸需要のない物件を選ぶと空室が埋められず収入が見込めなくなります。
不動産投資は、10年、20年先を考えて行うものです。目先の利益で節税できても、その後の収入が見込めなければ永遠と赤字が続いてしまいます。そのため、物件選びは慎重に行うようにしてください。
節税のために赤字経営を行って自分の首を絞めては意味がありません。今一度、投資を行う目的を再確認してください。
不動産投資でかかる税金
不動産投資は節税ばかりではありません。不動産投資だからこそかかる税金もあります。
所得税
不動産投資で収入を得たら所得税を納めなければなりません。これが黒字になったら払う税金です。
不動産所得税
不動産所得税は、不動産(土地・建物)を売買で得た時に支払う税金です。計算式は、「課税評価額×税率」です。
令和3年3月31日までなら軽減税率で住宅と土地は3%、住宅以外で4%になっています。課税評価額は、固定資産評価額が用いられます。
固定資産税
固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産を所有する個人や法人に課される税金です。ここも固定資産評価額が用いられ、税率は1.4%です。
このほかにも、売買契約書に必要な印紙税、不動産の所有権登記に必要な登録免許税など不動産投資だからこそかかる税金もあります。
しかし、所得税以外は経費計上が可能です。よって、税金で課税所得を減らすこともできます。
困ったら不動産投資のプロに相談しよう
不動産投資の節税に困ったら税理士や不動産業者に相談しましょう。不動産投資は節税効果が高いものの、経費の当て方や還付の方法など一人では理解できない作業が多いです。
その時に、税理士から経費のアドバイスや税金還付の方法などを教えてもらえればスムーズに節税を行うことができます。
税理士に依頼すると費用はかかりますが、初めての不動産投資だからこそ頼れる税理士と一緒に節税をしてください。
さらに、不動産会社も投資のプロなので、節税について困ったことがあれば相談するようにしましょう。
不動産以外で節税が可能な投資
不動産投資以外にも節税が可能な投資に、積立NISAやiDeCoがあります。
積立NISA
積立NISAとは、投資信託を毎月自動購入して行う積立投資です。通常、金融商品や不動産は運用利益に税金がかかります。その税率は、20.315%にもなります。
しかし、積立NISAなら、売却益や運用益は毎年40万円まで最長20年間は非課税となります。つまり、所得税を節税できるのです。
iDeCo
iDeCoは、自分が拠出した掛け金を自分で運用して資産形成を行う年金制度です。iDeCoは、積立NISAと同じく運用益は非課税となります。
さらに積立てた掛け金は全額所得控除の対象となり、所得税や住民税の控除が受けられるのです。
このように、不動産投資以外の金融商品でも節税を狙える商品はあります。節税だけをお考えでしたら、上記2つも試されてはいかがでしょうか。
まとめ 不動産投資の目的は節税ではない
ここまで、不動産投資の節税について解説してきました。はっきりいいますが、節税目的での不動産投資はオススメしません。なぜなら、節税効果は投資後数年しか受けられないからです。
節税効果は年々薄れていくのに、空室が続いて家賃が入ってこない、資金繰りが悪化したなどがあっては投資の意味がありません。
節税を考えるより、運用益や売却益を考えて投資をした方が、はるかに将来のためになります。
目先の利益ばかり考えず、長期的視野をもって不動産投資を行うようにしてください