治験コーディネーターについて興味があるが、どんな仕事なのか、どうやったらなれるのかがわからず困っていませんか?
治験コーディネーターの認知度は低く、知っている人も少ないため身近にいないとイメージがしづらい職業ですよね。
この記事では、治験コーディネーターの仕事内容や年収などを解説します。また、取得しておくべき資格や治験コーディネーターの求人を探すのにオススメの求人サイトも紹介します。
この記事を読むと治験コーディネーターの全てが理解できるので、ぜひ最後まで読んでみてください。
(アイキャッチ画像出典:https://unsplash.com/photos/-2Xvz8uRnfM)
治験コーディネーターとは?
製薬会社が新たに薬を開発したとき、人体への有効性や安全性を確認するために「臨床試験(治験)」が行われます。
治験は第Ⅰ相~第Ⅲ相の3段階で行われます。すべての段階がクリアできたときに、厚生労働省へ試験結果を提出して治験は終了です。
- 第Ⅰ相:少数の健康な成人を対象に、副作用などの安全性を確認する試験
- 第Ⅱ相:少数の対象疾患患者に、安全性・有効性・用法・用量を確認する試験
- 第Ⅲ相:多数の対象疾患患者に長期服用の副作用や個人差、既存薬との比較を確認する試験
※市販後、第Ⅳ相(製造販売後臨床試験)を行うこともある。
上記のような治験がスムーズに行われるよう、治験参加者をサポートしたり、関係者のスケジュールを調整したりするのが「治験コーディネーター」の役割です。
治験コーディネーターは、英語表記の「Clinical Research Coordinator」の頭文字をとって「CRC」とも呼ばれています。
治験コーディネーターの年収は約426万円
治験コーディネーターとして働くと、いくらもらえるのか気になりますよね。厚生労働省が出している「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、約426万円が平均になっています。
未経験者の場合は300~400万円、経験者の場合400~500万円が提示されることが最も多いです。
ベテランの治験コーディネーターになり、治験業務の中心的な役割を担うようになると年収1,000万円を超えることもあるそうです。
また、企業によっては福利厚生が充実しており、額面以上の待遇が受けられることもあります。外勤手当や営業日当が支給されることもあり、年収は比較的高い傾向にあります。
治験コーディネーターの仕事内容は?
治験コーディネーターには、2つの働き方があります。しかし、どちらの働き方でも仕事内容はほとんど変わりません。
- 医療機関の治験事務局に直接雇用される
- 民間企業のSMO(治験施設支援機関)から医療機関に派遣される
基本的に1つの治験を担当するのですが、SMOから派遣される治験コーディネーターは、複数の医療機関で治験を担当することもあるそうです。
では、実際の仕事内容を解説していきます。治験コーディネーターの仕事は主に次の3ステップで分けて解説します。
- 「治験準備時」
・治験実施計画書(プロトコル)の理解
・スタートアップミーティングの補助
・検査機器の管理 - 「治験実施時」
・被験者募集(スクリーニング)
・治験の説明文書と同意書の作成
・被験者のスケジュール管理と対応
・症例報告書(CRF)の作成
・有害事象への対応 - 「治験終了後」
・治験終了報告書の作成
治験準備時
治験準備時は、行われる治験の内容や流れ・役割、使用する医療機器などの把握です。以下の表に詳しくまとめています。
治療実施計画書 (プロトコル)の理解 |
治療依頼者の担当者(モニター)より治療実施計画書の内容について説明をします。治験コーディネーターは担当する「治験実施計画書」を読み込み、理解することが重要です。 |
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スタートアップミーティングの補助 | 医療機関で治験を行うにあたり、院内関係者(医師・看護師・臨床検査技師・薬剤師など)および治験コーディネーターが集まり、役割分担やスケジュール確認を行います。 |
検査機器の管理 | 治験資材(外注検査キット・症例ファイル等)の搬入・管理、治験薬搬入時の立会いなどを行います。他には、資料作成(業務手順書の作成・被験者ファイルの準備など)です。 |
治験実施時
治験実施時は、被験者募集から説明・管理、有害事象発生時の対応をします。報告書の作成も行うため、基本的なPCスキルが必要です。
被験者募集 (スクリーニング) |
対象疾患・選択基準、除外基準による患者の選択リストの作成です。候補者は病院の電子カルテや医療情報システムから探したり、広告を利用します。 |
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治験の説明文書と 同意書の作成 |
治験責任医師が被験者に事前説明を行う場に同席します。ほかには、同意書の作成や被験者の理解補助の手助けです。 |
被験者のスケジュール 管理と対応 |
被験者の来院日や検査・投薬予定日などを管理です。来院時には医師の診察に同席し、服薬状況の確認、有害事象の有無、残薬回収、併用薬剤の確認などを行います。 |
症例報告書(CRF)の作成 | 治験責任医師の指示に従い、「症例報告書」を作成します。ほかには、原資料(カルテや投薬記録表、検査結果伝票、投影画像、症状など)から医学的判断を要しないデータの確認です。 |
有害事象への対応 | 治験中に被験者に好ましくない副作用が起こった場合、初期対応を行います。「重篤な有害事象に関する報告書」を作成、製薬会社および病院長に提出します。 |
治験終了後
治験終了後は、臨床試験の結果を報告書にまとめて提出します。予定より早く契約症例に達した場合は、評価が上がります。
治験終了報告書の作成 | 症例報告書が製薬会社と契約した数に達し、被験者の調査が終了したら、「治験終了報告書」の作成です。原案は、治験責任医師が内容を確認したうえで、実施医療機関の院長に提出します。 |
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ここまでが治験コーディネーターの行う仕事内容です。事務的な仕事が多く、被験者との会話もあるため、PCスキルやコミュニケーションスキルが重要になってきます。
治験コーディネーターの1日の流れ
治験コーディネーターの仕事内容が理解できたところで、1日の流れについても知りたいですよね。そこで、1日のスケジュールを公開していきます。
一般的なスケジュールの紹介なので、治験内容や実施施設で多少異なることがあります。
9:00~10:00 | 出勤し、メールチェックおよび本日のスケジュール確認 |
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10:00~11:00 | ・来院予定の被験者のカルテチェック ・医師や医療機関スタッフへの報告及び打ち合わせ |
11:00~13:00 | ・被験者対応 (体調変化や服薬状況、残薬回収、医師診察同席、服薬方法指導、次回来院スケジュール確認・調整、治験協力費支払い手続き、症例報告書作成補助、検体処理など) |
13:00~14:00 | 昼休憩 |
14:00~16:00 | ・インターネットを使って臨床データを収集し、データを抽出する ・原資料(カルテや記録)を直接閲覧し、照合・確認する ・次回来院時の準備 |
16:00~18:00 | ・メール対応、業務報告 ・検体回収対応 |
18:00 | 退社 |
一日のスケジュールはこのような感じです。午前中は被験者の対応し、午後は被験者の情報収集やデータ解析をします。
治験コーディネーターになるために、専門的な資格は必要か?
ここからは、治験コーディネーターになるためにはどうしたらいいのか具体的に解説していきます。
まず、治験コーディネーターになるために資格を取る必要はありません。医療関係の資格がないとできないと思われていますが、大丈夫です。
以下のグラフをご覧ください。SMO(治験施設医療機関)で働く資格保有者を表したものです。
上記のグラフからわかる通り、約3割ほど医療資格は持っていません。しかし、専門的な知識を要するため、それ相応のキャリアを積むことが不可欠です。
医療資格を持っていた方が就職には有利です。特に、「臨床検査技師」「看護師」「薬剤師」は、治験で求められているスキルや技術を身についけているため、即戦力になります。
どうやって医療資格なしでも治験コーディネーターになれるのか?
求人サイトから未経験者募集の広告を見つけて応募することで可能です。しかし、求人数が少ないので医療資格がない場合は見つけづらいかもしれません。
そのため、未経験者募集を見かけたら自分の希望する条件と合うか確認し、問題なければどんどん応募していきましょう。
就職後は、今後のキャリアを見据えて働くことをオススメします。なぜかというと、医療コーディネーターは専門的な知識が多いため専門性を高めていくことで転職が有利になるからです。
特に、医療資格があっても法律や臨床研究論についての知識を持っていない人の方が多いです。そのため、実務経験が2年を超えたら以下の資格を取得してみましょう。
- 日本臨床薬理学会 日本臨床薬理学会認定CRC制度
- 日本SMO協会 CRC公認試験
キャリアアップを目指すには、上記2つの資格は欠かせません。そのため、それぞれを詳しく解説していきます。
日本臨床薬理学会認定CRC制度とは?
日本臨床薬理学会認定CRC制度とは、2003年に日本臨床薬理学会が臨床試験の適正かつ円滑な実施に貢献できる人材を認定するために作られた制度です。
臨床コーディネーターは、様々な関係者と連携・管理を行います。そのため、臨床研究の実施に必要な調整役として専門性を磨くことが大切です。
認定を受けたCRCは、幅広い活躍が期待されています。学会からの認定ということもあり、転職に有利です。
ただし、治験コーディネーターとして事務経験が2年以上ないと受験することができません。経験を積んでから、挑戦していきましょう。
日本SMO協会 CRC公認試験とは?
CRC公認試験とは、2005年に日本SMO協会が「円滑な治験支援業務」を行うために資質向上を目指して行っている試験です。
公認試験なので、こちらも転職に有利になるものです。ただし、この試験を受ける場合には注意点があります。
受験資格を得るには、「CRC導入教育研修を修了している」「研修終了後、実務経験が2年以上」という条件があります。
受験できるようになるまで最短で3年かかるので、時間をかけて成長していきましょう!
治験コーディネーターの求人を探すのにオススメの求人サイト3選
キャリアアップの資格を取るには「治験コーディネーターとしてどこかに就職している」ことが必須です。
未経験者で治験コーディネーターになるのはかなり狭き門なのですが、求人サイトによって求人数にばらつきがあります。
未経験者募集の求人数が多いほど、就職率が高いです。そのため、未経験の治験コーディネーター求人数が多い求人サイトを3つ紹介します。
特に、上記2つは治療コーディネーターに特化したサイトのため未経験者でも募集をかけている求人が多いです。
治験コーディネーターの解説まとめ
治験コーディネーターについて詳しく解説してきました。ここでは、この記事の内容をまとめていきます。
治験コーディネーターとは、臨床試験が円滑に行われるよう各機関と調整を行う役割を担っています。治験コーディネーターになるために、特に資格は必要ありません。
ただし、今後のキャリアアップを見据えている方は、専門性を高めるために以下の2つの資格を取得することがオススメです。
- 日本臨床薬理学会 日本臨床薬理学会認定CRC制度
- 日本SMO協会 CRC公認試験
注意点としては、どちらの資格も臨床経験2年以上必要です。そのため、未経験でもどこかに就職しなければいけません。
そこで、未経験者でも治験コーディネーターとして就職・転職しやすいオススメの求人サイトを3つ紹介します。
特に上記2つは、治験コーディネーター専門の求人サイトです。未経験者の募集も他と比較して多数掲載されています。ぜひ活用してみてください。
ここまで読んでいただきありがとうございました。以上、参考になればうれしいです。