「証券口座の移管って何をしたらいいんだろう」「いまの証券会社から他社に口座を移動して運用を続けたいけど損にならないかな…」と、悩んでいませんか?
もっと自分に合った新しい証券会社で運用を継続したいとは思うものの、手続きがややこしそうで踏み出せず、結局いまの証券会社から身動きが取れなくなることはよくある話です。
この記事では、証券口座の移管について、基礎知識から移管の方法までをわかりやすく解説しています。
利用者の多い証券会社の具体的な移管方法も紹介していますので、読み終わる頃には移管の手続きがわかるようになりますよ。ぜひ最後まで読んで、証券口座を移管する際の参考にしてみてください。
- 証券口座の移管を考えているがそもそも「移管」がよくわからない
- 移管することのメリット・デメリットを知りたい
- 損することなく証券口座を移管したい
(アイキャッチ画像出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/352684?title=%E6%8A%95%E8%B3%87%E3%80%80%E3%82%BB%E3%83%94%E3%82%A2%E8%AA%BF)
証券口座の「移管」とは?
移管とは、「管理・管轄をほかへ移すこと」です。証券口座における移管とは、投資家が証券会社で購入し保有している金融商品の管理場所を、現在の証券会社から他の証券会社に移すことを言います。
ここでの「金融商品」は、国内外の株式や投資信託、国内債権などの、証券会社で保有している資産のことです。
自分の資産を移動すると言っても、普通の銀行口座とは勝手が違い、証券会社で移管の手続きをする必要があります。移管の手続きで利用する制度が、「証券保管振替制度(ほふり)」です。
証券保管振替制度により、資産を一旦自分で引き出して他の証券会社に預け替えするといった作業を自分で行わずとも、証券会社同士のやり取りのみで預け替えを完了することができます。
証券口座の移管は、「預け替え」「振替」とも言われています。
証券口座を移管するとき手数料はかかる?
証券口座の移管に手数料がかかるかどうかは、証券会社によって異なります。
入庫・出庫共に手数料を無料にしている証券会社もあれば、入庫は無料であるものの出庫時に手数料を設けている証券会社もあります。
出庫時に手数料を設けている証券会社は、基本的に1銘柄、1売買単位ごとに数千円単位で設定されていることがほとんどです。
「知らないまま手数料を支払うことになっていた…」と後悔することがないように、現在利用している証券会社と移管先の証券会社のHPで出入庫時の手数料の有無を確認しておきましょう。
- 入庫:投資家の資産を他証券会社から自社に移すこと
証券会社はお客様に自社を利用してもらうことが目的のため、基本的に入庫時の手数料は無料
- 出庫:投資家の資産を自社から他証券会社に移すこと
証券会社によって手数料がかかる場合がある
証券口座を移管するメリット
資産運用をする上であなたが重視するポイントについて、移管したほうが得られるものが大きい場合は移管を前向きに検討してみましょう。
ここからは、証券口座を移管する主に3つのメリットを紹介します。
- 取引にかかるコストの削減
- 運用会社をひとつにまとめることで管理が楽になる
- 信用取引をしているネット証券にまとめると担保が増える
取引にかかるコストの削減
いま運用している証券会社よりも取引にかかる手数料が安い証券会社がある場合、移管することでコストを削減することができます。
資産運用を始めたときからずっと同じ証券口座を使っていると手数料に慣れてしまいがちですが、いまは取引手数料を安く設定しているネット証券が数多く存在します。
できるだけコストをかけずに運用することを重視するなら、運用にかかる手数料が安い証券会社に移管しましょう。
移管先の証券会社によっては信託報酬も低い場合があるので、併せてチェックしておくことをおすすめします。
信託報酬とは、証券会社に支払う管理・運用費のことを言います。資産から決まった割合の金額が日割りで決定され、自動的に差し引かれます。
運用会社をひとつにまとめることで管理が楽になる
複数の証券会社に口座を保有して運用している場合、証券口座を移管することで楽に管理することができます。
とりあえずお得に使えそうな証券会社で口座を開設してみたはいいものの、資産全体の運用成績の計算や資金の移動、売買の管理などの作業が必要になることをあとから知って悩むことは多いです。
証券口座を複数持つことについて「意外と手間がかかるな…」と負担に感じている場合は、移管してひとつにまとめることをおすすめします。手間を省いて楽に運用することができますよ。
無理なく長期的に運用を続けるためにも、まずはひとつの証券口座で資産運用に慣れるところから始めて、慣れてきた段階で複数の口座を開設して本格的に運用すると良いでしょう。
信用取引をしているネット証券にまとめると担保が増える
信用取引を行っている証券会社に資産をまとめることで、担保として預けられる資産が増え、そのぶん売買できる金額を増やすことができます。
手元の資産以上の取引をすることができるため、売買できる範囲を広げたい方は信用取引を行っている証券会社に移管して、ひとつの口座に資産を集めることをおすすめします。
信用取引とは、一定の金額を保証金として証券会社に預けることで、保証金の数倍の金額を証券会社に借りて取引ができる方法のことです。
信用取引では手持ちの資金以上に損失が発生する場合があるため、メリット・デメリットをよく理解した上で利用しましょう。
証券口座を移管するデメリット
証券口座を移管して後悔しないために、デメリットも把握しておきましょう。
- 移管できない場合がある
- 移管が完了するまでは取引ができない
- 出庫の際に手数料がかかる場合がある
移管できない場合がある
証券口座を移管したいと思っても、移管出来ない場合があります。以下に移管できない場合を3つまとめました。
- 口座区分が違う場合
- 移管先に同じ銘柄の取り扱いがない場合
- NISA、iDeCoの移管は不可
口座区分が違う場合は、制度上どの証券会社でも基本的に移管できません。移管先に同じ銘柄の取り扱いがあり、口座区分も同じ場合に移管手続きを進めることができます。
移管先の証券会社で移管したい銘柄とともに、証券会社によっては外国株に対応していない場合があるため、移管先の注意点をよく確認しておきましょう。
NISAやiDeCoは、証券会社の変更はできるものの、変更後の証券会社に資産を移管することはできません。
これから運用を開始する方は、移管できないことを知った上で証券会社を吟味して運用するようにしましょう。
移管完了まで売買は不可
移管は証券会社同士の手続きが必要になるので、手続きが終了するまで売買取引をすることができません。
証券口座を移管する手続きをした場合にかかる期間は、証券会社によって様々です。ほとんどの証券会社が手続きに1〜2周間前後の期間を要します。
移管先の手続きにかかる期間を調べて、余裕を持って移管するようにしましょう。
移管手数料が発生する
移管元の証券会社によっては、移管する上で手数料がかかる場合があります。
出庫・入庫共に手数料無料としているところもありますが、基本的には出庫する際にかかることが多いです。
証券会社の中には、同一名義は無料であるものの異名義間での移管には手数料を設けているところもあります。
移管手数料の金額は証券会社ごとに異なり、1銘柄や1単元あたりの金額が決められています。手数料を引かれた後に驚かないためにも、移管元や移管先の手数料を把握しておきましょう。
移管に向いている人の特徴
ここまで紹介したメリット・デメリットを踏まえて、証券口座の移管に向いている人の特徴を3つ紹介します。
- いまの証券会社よりも取引時の手数料が安くなる
- 税金をかけずに含み益を引き継ぎ、口座をまとめたい
- 移管先の証券会社の方が使いやすい
移管に向いている人とは、要するに「移管したほうが得られる利益が大きい人」のことを言います。
金融商品の購入金額は、どの証券会社で取引をしても変わりません。そのため、コストを重視するなら、取引時にかかる手数料の安い証券会社に移管して運用することがいちばんの方法です。
また、いま運用している金融資産に含み益がある場合に証券口座を他の証券会社に移すことを検討しているなら、一旦売却してしまうと税金がかかってしまうため移管することをおすすめします。
他にも、取引時に利用するアプリやツールの使い勝手に不満があって「他社の方が使いやすいかも」と思うときは、移管を検討しましょう。
証券口座の移管で後悔しないための4つのポイント
証券口座を移管するか迷っているなら、移管して後悔しないための4つのポイントを軸に考えてみましょう。
- 含み益の金額はどのくらいか
- 手数料がかかる場合、支払ってでも移管するメリットがあるか
- 活発に取引しそうな時期が来そうか
- 書類を不備なく揃えられそうか
移管ではなく「一旦売却して新しい口座で買付し直そう」と思っていると、含み益の金額によっては確定申告する必要が出てきます。
移管するなら確定申告の必要はありません。そのため、含み益の金額によっては移管するほうがメリットになります。
他にも、相場の動きが激しい時期に移管してしまうと取引したい時期にできない状況になったり、書類に不備があると、1週間で終わるはずの手続きが1ヶ月かかったりすることもあることを知っておきましょう。
メリットやデメリットと併せて考えて「移管したほうがメリットが大きそう」と判断したら、移管することをおすすめします。
証券口座の移管の方法
証券口座の移管方法は、証券会社によって異なります。手続きをスムーズに進められるように、実際に移管先として考えている証券会社のHPで手順を確認しておきましょう。
ここでは具体例として、人気の証券口座の移管方法を紹介します。
- SBI証券
- 楽天証券
- 野村證券
SBI証券
SBI証券は、数々の取引きにかかる手数料を無料で利用することができるところが人気の理由です。
コストパフォーマンスに優れているにも拘らず、ネット証券の中では取扱い銘柄の本数も多いため、個人投資家の人気を得ています。SBI証券の移管の手続き方法は、以下の通りです。
- 必要書類の準備(印刷または取り寄せ)
- 書類を送付
- 書類到着次第移管作業開始
- 口座の開設
- 書類の請求
- 郵送されてきた書類に必要事項を記入
- 移管元の証券会社に書類を提出
- 書類到着次第移管作業開始
SBI証券の移管手続きの詳細が気になる方は、公式HPを確認しましょう。
楽天証券
楽天証券は、ネット証券の中でも数多くの銘柄を取り扱っていることから、多くの投資家に選ばれています。2023年3月現在の取扱い本数は2,625本と、ネット証券の中でもトップクラスです。
すべての買付手数料が無料なだけでなく、充実したサービスも人気の理由のひとつとなっています。楽天証券の移管の手続き方法は、以下の通りです。
- 必要書類の準備(印刷)
- 書類を送付
- 書類到着次第移管作業開始
- 口座の開設
- 移管元の証券会社に書類を請求
- 必要事項の記入
- 移管元の証券会社に書類を返送
- 書類到着次第移管作業開始
楽天証券の移管手続きの詳細が気になる方は、公式HPを確認しましょう
野村證券
野村證券は、業界最大手の証券会社です。投資家ひとりひとりに合わせた手厚く質の高い商品・サービスの提供を売りにしています。
ネット証券と比べると手数料がかかるものの、昔からある証券会社での取引は安心できると人気を得ています。野村證券の移管の手続き方法は、以下の通りです。
- 書類の請求(店舗または電話)
- 必要書類の提出
- 書類到着次第移管開始
- 口座開設
- 移管元の証券会社に書類を請求
- 必要事項の記入
- 移管元の証券会社に書類を返送
- 書類到着次第移管開始
野村證券の移管手続きの詳細が気になる方は、公式HPを確認しましょう。
移管手数料のキャンペーン情報
証券会社によっては、移管元で出庫時にかかる手数料をキャッシュバックするキャンペーンを行っているところがあります。
キャンペーンの恩恵を受けるには「1ヶ月で総額100万円以上入庫」などの条件を設定している証券会社もあります。移管先の条件でどんなキャンペーンが行われているか、詳細を確認しておきましょう。
いずれのキャンペーンも手続きが必要となる場合がほとんどです。損することがないよう、キャンペーンの期限内に忘れずに申請しましょう。
キャンペーンの条件だけでなく、どれだけキャッシュバックを受けることができるかも、証券会社によって異なります。自分が対象となるかどうかを含めて、移管先の証券会社のHPを確認しておきましょう。
NISAやiDeCoの証券口座を変更するには
NISAやiDeCoで利用している非課税の証券口座は、規定として移管できません。
移管はできないものの、新たな証券会社に口座を変更する方法はあります。ここからは、NISAとiDeCoの口座変更の方法について、特徴を交えて紹介します。
NISAの口座変更は1年に1回
NISAで利用する口座の変更は1年に1回行うことができますが、保有している金融資産を移管することはできません。
変更前の口座で保有している金融資産を売却せずにそのまま保有し続ける場合は、新しく開設した口座と併せて2つのNISA口座を管理することになります。
NISAは変更前の口座の金融資産も非課税で保有し続けることができます。そのため、すぐに売却せずとも、非課税期間の間は管理しておいても良いでしょう。
複数の口座を管理する手間はかかりますが、状況によっては非課税期間終了時まで運用した後に売却し、新しく開設した口座のみに1本化するという選択もできます。
- 既に運用を開始している場合は金融資産を移管できないため、新しい証券会社でNISA口座を開設したら以前の口座と併せて2つの口座を管理することになる
iDeCoの口座変更は一旦売却して買付し直す必要がある
iDeCoの場合は、証券保管振替制度を利用した移管ができません。現在保有している資産を一旦売却して現金化し、新しい証券会社にて時価で買付し直して運用する手順が定められています。
iDeCoの証券口座を他社に変更するにはデメリットが多いため、よく考えた上で口座変更する必要があります。
iDeCo口座を変更してメリットを受けられるのは、「口座管理に手数料がかけられている古いプランを利用している場合」です。
そうでない場合は、口座変更にかかる手数料や新たなiDeCo口座の開設手続きにかかる1〜2ヶ月間は運用できないなどのデメリットの方が大きいため、いまの証券会社で運用を継続することをおすすめします。
- iDeCoの口座変更は、一旦売却して現金化し、新しい証券会社で時価で買付し直して運用する必要がある
- 口座管理に手数料がかけられているプランを利用している場合以外は損をする可能性が高い
【まとめ】自分に合った証券口座へ移管しよう!
証券口座の移管に失敗しないコツは、移管前と移管先それぞれの証券会社の情報をしっかり把握することです。
「移管したい」と思っていてもできない場合もあります。まずはあなたの証券口座が移管できるのかどうか、証券会社のHPを確認してみましょう。
その上で、移管のメリット・デメリットやポイントを踏まえて、あなたにとって移管することが利益になるのかを総合的に評価してみてください。
移管することのメリットがデメリットを上回るなら、迷わずに移管することをおすすめします。