「臨床工学技士ってどんな仕事をしているのだろう?」「どうやったら臨床工学技士になれるのかな?」
このように考えていませんか?臨床工学技士の人数はとても少なく、情報収集がとても大変ですよね。
この記事では、病院で臨床工学技士と一緒に仕事をしている私が、実際の仕事内容やどうやって臨床工学技士になるのか詳しく解説していきます。
この記事を読むことで、臨床工学技士が実際の現場でどのように働いているのかが分かります。気になる方はぜひ最後まで読んでみてください!
アイキャッチ画像出典:https://unsplash.com/photos/05kHY7AYCp8
臨床工学技士とは
臨床工学技士とは、医師の指示のもと人工呼吸器や人工透析装置・人工心肺装置など生命維持管理機器を操作したり、安全に使用できるよう保守点検を行ったりする医療技術者です。
院内では、臨床工学技士を「CE(Clinical Engineer)」「ME(Medical Engineer)」と呼んでいます。
2022年現在、臨床工学技士は約2.5万人いると言われています。他の医療従事者と比較するとかなり少なく、臨床工学技士が常駐している病院がまだまだ少ないです。
- 医師 ━ 約33万人
- 看護師・准看護師 ━ 約156万人
- 薬剤師 ━ 約31万人
男女比は3:1と男性の方が多いです。しかし、女性の方も最近増えてきており、私の施設では20人中8人女性です。
臨床工学技士は、医療機器専門で扱う以外にも他職種とのコミュニケーションを行います。そのため、以下項目に当てはまる人に向いている職業です。
- 医療機器を扱う作業や細かい作業が好きな人
- コミュニケーションをとるのが上手な人
- 責任感が強い人
- 新しい機械が好きな人
- 人を助けたいという思いがある人
どれか一つでも当てはまっていれば、臨床工学技士に向いているといえます。
臨床工学技士の仕事内容
臨床工学技士の仕事内容は配属された部署によって異なります。配属される部署は次の通りです。
- 透析室
- 手術室
- 集中治療室(ICU)
- 心臓血管カテーテル室
- 高気圧治療室
- 医療機器管理室
- その他
各病院に配置されている臨床工学技士は少ないので、一通りすべてのことができるようにしなければいけません。
そのため、総合病院では期間を設けてそれぞれの部署をローテーションしながらやり方を覚えていくことが多いです。
それぞれの部署で臨床工学技士がどのように活躍しているのか次から詳しく見ていきましょう。
臨床工学技士の仕事内容①:透析室
臨床工学技士が最も配属される代表的な部署は「透析室」です。透析室では、人工透析の機械を扱います。
臨床工学技士が行うのは、透析回路の組み立てや透析中に機器の異常がないかチェックし、患者さんに変化がないか確認することです。
また、集中治療室(ICU)でベッド上から動けない人に透析を行う場合、病室まで出張透析を行うことがあります。
その時も、臨床工学技士が付き添いで行うため、透析で起こりうる合併症や対策法を知っておく必要があります。
臨床工学技士の仕事内容②:手術室
臨床工学技士の活躍の部署2つ目は「手術室」です。手術室には、臨床工学技士なしでは成り立たないといっても過言でないくらい多くの医療機器が備えられています。
臨床工学技士の役割は、麻酔器や内視鏡、人工心肺装置、補助循環装置など医療機器の管理です。
緊張感の走る現場なので、医療機器の不具合やトラブルにすぐ対応できるようにしておく必要があります。
手術に入るためには、それぞれの医療機器に慣れておくことが必要です。そのため、入職後すぐに配属されることはありません。
臨床工学技士の仕事内容③:集中治療室(ICU)
3つ目は「集中治療室(ICU)」です。集中治療室は、重症度が高い患者さんを24時間体制で治療しています。
臨床工学技士の役割は、人工呼吸器や補助循環装置などの生命維持装置の管理や点検を行うことです。
手術室とは違い、医療機器の使用が長期的にあることもあり、それに伴うトラブルや不具合が起こります。
夜勤では一人で対応することもあるため、ある程度の知識と経験がないと務まりません。
臨床工学技士の仕事内容④:心臓血管カテーテル室
次に紹介するのは「心臓血管カテーテル室」です。心臓や心臓に栄養を送る血管に病気がある人に治療を行う場所です。
臨床工学技士は、検査や治療で使用されるカテーテルや医療機器の管理を行います。
カテーテル治療に使われる医療機器は数種類もあり、覚えるのが大変です。そのため、慣れるのに時間がかかる部署です。
緊急時には、急変対応や補助循環装置の準備を行うため、予測力や対応力を身につけることができます。
臨床工学技士の仕事内容⑤:高気圧治療室
5つ目は「高気圧治療室」です。通常よりも濃度の濃い酸素カプセルで治療を行う場所です。
臨床工学技士は、高気圧酸素機器の維持・管理を行います。行っている施設がまだ少ないので、場所によってはないかもしれません。
「患者さん1名を収容できるタイプ」と「複数名収容できるタイプ」があるため、それぞれの管理を行います。
最も管理がしやすく覚えやすいので、新人はまず高圧酸素療法から学ぶことが多いです。
臨床工学技士の仕事内容⑥:医療機器管理室
6つ目は「医療機器管理室」です。院内で使用される医療機器を安全に使用できるように管理や保守点検を行います。
病院では輸液ポンプや人工呼吸器などの医療機器の貸し出し返却を行っているので、定期的な点検をしています。
臨床工学技士の役割は、大きな医療機器から小さな医療機器まで様々な医療機器を管理することです。
院内にあるすべての医療機器が管理できるよう日々知識や経験を深めて、トラブルシューティングを身につけていきます。
臨床工学技士の仕事内容⑦:その他
上記で列挙した場所以外にもペースメーカ外来や不整脈治療、内視鏡業務などの業務に関わっています。
医療機器の高度化にともない、臨床工学技士は今後もさまざまなフィールドで活躍することが期待されています。
臨床工学技士は覚えることが多く、患者さんの命に直結する機械の管理もあります。常に緊張感や不安でいっぱいになりますが、やりがいのある仕事です。
自分が管理している医療機器で、一人でも多くの患者さんが、安心・安全に過ごすことができる環境づくりができることがとても魅力的です。
臨床工学技士になるためには、専門の大学や短大に行く必要がある
臨床工学技士になるためには、年1回行われる「臨床工学技士国家試験」に合格する必要があります。
臨床工学技士国家試験を受験するためには、臨床工学技士の養成課程のある大学か短大・専門学校に進学することが必須です。
臨床工学技士国家試験の合格率は80%と高く、勉強をしっかりしていれば合格できるような試験になっています。
「スタディサプリ進路」というサイトで、臨床工学技士を目指せる大学や短大が検索できます。大学や短大を探している方はぜひ公式サイトから検索してみてください。
臨床工学技士の平均年収は約350~450万円
臨床工学技士として働くのなら、年収についても理解しておきましょう。年代別の年収をまとめてみました。
年代 | 年収 | |
20代 | 約300万円 | 公立や大学病院の場合は 約450万円 |
30代 | 約350~550万円 | |
40代以降 | 約400~650万円 | 規模の大きな病院の管理職は 約800万円 |
20代の頃は、働く施設や勤務形態によって年収が異なります。そして、年代が上がるごとに年収は増えていきます。
臨床工学技士の平均年収は、約350~450万円です。夜勤手当や時間外業務などにより年収は前後するようです。
臨床工学技士は将来性の高い職業である
近年、医療機器の発達は著しく、AIの導入により機械が自動で患者さんに合った設定をしてくれるようになりました。
そのため、臨床工学技士という職業は「今後も存在しているのか?」と疑問の声が上がるようになってきました。
しかし、以下3つの理由から、臨床工学技士はこれからも将来性のある職業です。それぞれ詳しく解説していきます。
- 医療現場には、最新の機械が次々に導入されている
- 医師や看護師に、医療機器の詳細を勉強するのは難しい
- 医療機器を日常的に使用する患者さんが増えている
医療現場には、最新の機械が次々に導入されている
医療現場には、日々最新の機械が導入されています。特に、急性期病院のICUやCCUは、患者さんの生命を救うため頻回に新たな医療機器が導入されます。
そのため、臨床工学技士の役割は医師や看護師に新しい医療機器の勉強会を開催することです。
医師や看護師には分かりにくい医療機器の特徴や専門的な内容を実践レベルで解説するため、とても重要な存在として活躍しています。
今後も医療の進歩に伴い、新しい機器が次々に導入されるため活躍が期待されています。
医師や看護師に、医療機器の詳細を勉強するのは難しい
医師は「治療」、看護師は「日常生活援助」に関する内容を多く学んでいます。そこに、医療機器管理となると更なる勉強が必要です。
しかし、医療機器は複雑で学ぶことが多く、医療機器の詳細まで勉強をすることは難しいです。
そのため、機械が原因によるトラブルや誤作動についてはすぐに対応することができません。そのようなとき、臨床工学技士が頼りになります。
臨床工学技士は医療機器の詳細を勉強しているため、医療機器の特徴を踏まえた対処法が分かるためです。
医療機器を日常的に使用する患者さんが増えている
医療機器の進歩に伴い、日常的に医療機器をつける方が増えています。
そのような方たちは、定期的に外来に来て全身状態を確認します。医療機器は臨床工学技士で管理することが多いです。
特にペースメーカーは、臨床工学技士が医師の指示のもと設定変更や確認を行っています。
このように、医療機器を扱う場面が増えているのに加え、医療機器の発達により専門性が求められる時代になっています。そのため、臨床工学技士は欠かせません。
臨床工学技士のまとめ
ここまでの内容をまとめていきます。臨床工学技士の人数は少ないですが、様々な部署で活躍を期待されています。
将来性もあり、今後活躍の場が広がっていくでしょう。臨床工学技士になるのは専門の内容を学ばなければいけません。
臨床工学技士の大学や短大はこちらのサイトで検索することができるのでボタンからホームページへアクセスしてみてください。
ここまで読んでいただきありがとうございました。臨床工学技士に興味を持っていただけたら幸いです。