公認心理師とは2017年に新設された国家資格です。受験資格を獲得するには最低でも6年が必要となります。
また心理の資格として臨床心理士と比較されることも多く、心理の仕事を目指したいけどいまいち何がいいのかわからないことも多いですよね。
この記事を読めば公認心理師の受験資格を得るまでの課程や、公認心理師の現状、将来性を知れる内容になっているのでぜひ読み進めてください。
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公認心理師とは
公認心理師とは心の専門家です。コロナの影響により社会情勢の変化や、職場環境等の問題から心の問題を抱える人が増えています。
そのような需要が増えていくなか心に問題を抱えている人が相談をする場が少ないこともあり、医療や福祉で活躍できる心の専門職として2017年に新設されました。
近年の社会情勢や環境の変化に対応するため「医療・保健」「教育」「産業・労働」「司法・犯罪」「福祉」の5領域でも活躍できる人材として期待されている資格です。
公認心理師の受験資格を得るには3つのルートがある
公認心理師を目指す上でのルートは基本的に3つあります。受験資格をとるためには専門知識を学ぶ必要があり、条件をクリアした人が受験資格を得ることが可能です。
- 4年制大学+大学院
- 4年制大学+認定施設での2年の実務経験
- 外国の大学+外国の大学院
基本的には4年制大学と大学院を卒業するか、4年制の大学を卒業した後に2年の実務経験を積むことにより、受験資格を得ることが可能です。
このルートでは受験資格に必要な項目や、特定施設の条件があります。この条件について紹介します。
- 4年制大学では23項目の履修が必要
- 大学院は9科目の履修が必須に。より実践的な内容がメイン
- 公認心理師の受験資格が得られる認定施設について
4年制大学では23科目の履修が必要
4年制の大学では、23科目の履修が必須です。その23科目を確認してみましょう。
公認心理師の職責 | 心理学概論 | 臨床心理学概論 | 心理学研究法 |
心理学統計法 | 心理学実験 | 知覚・認知心理学 | 学習・言語心理学 |
感情・人格心理学 | 神経・生理心理学 | 社会・集団・家族心理学 | 発達心理学 |
障害者・障害児心理学 | 心理的アセスメント | 心理学的支援法 | 健康・医療心理学 |
福祉心理学 | 教育・学校心理学 | 司法・犯罪心理学 | 産業・組織心理学 |
人体の後続と機能及疾病 | 精神疾患とその治療 | 関係行政論 |
公認心理師は心の専門家と冒頭でお伝えしましたが、子供からお年寄り、また障害を持った方までさまざまな人を対象にしているのが特徴です。
そのため、さまざまな心理に関係する学問はもちろん、障害に対してや発達領域に関する科目までの履修する必要があります。
大学院は9科目の履修が必須に。より実践的な内容がメイン
大学院での履修でも指定が存在し、大学院では以下の9科目の履修が必要です。
保険医療分野に関する理論と支援の展開 | 福祉分野に関する理論と支援の展開 | 教育分野に関する理論と支援の展開 | 司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開 |
産業・労働分野に関する理論と支援の展開 | 心理的アセスメントに関する理論と実践 | 心理支援に関する理論と実践 | 家族関係・集団・地域社会に関する理論と実践 |
心の健康教育に関する理論と実践 |
大学院では大学で学んだ知識を軸にしながら、より実践的な内容での履修する必要があります。
公認心理師の受験資格が得られる認定施設について
2番目のルートである、大学卒業後に認定施設での実務経験を2年実施することによって受験資格が得られるというものについてです。
現在文部科学省や厚生労働省が定めている施設は全部で8施設存在します。
- 少年鑑別所及び刑事施設
- 一般財団法人愛成会 弘前愛成会病院
- 裁判所職員総合研修所及び家庭裁判所
- 医療法人社団至空会 メンタルクリニック・ダダ
- 医療法人社団心劇会 さっぽろ駅前クリニック
- 学校法人川崎学園 川崎医科歯科大学附属病院
- 学校法人川崎学園 川崎医科大学総合医療センター
- 社会福祉法人風と虹 筑後いずみ園
- 社会福祉法人楡の会
認定施設によってプログラムの内容や応募方法が異なります。採用方法の情報を確認することが必要です。
認定施設でのプログラムを受けると、基本的には正社員雇用となるため給料をもらいながら資格獲得に向けて実務経験を重ねることができます。
認定施設等の情報も踏まえて、大学院へ進むか認定施設でのプログラムを2年実施するかについて進路を考えていく必要があるでしょう。
公認心理師と臨床心理士の違いとは
公認心理師の資格が設立される前からの資格として臨床心理士がありますが、現時点では募集されている仕事内容に明確な違いがありません。
しかし資格の種類や更新制度等の違い、今後の将来性も異なってくるため、公認心理師と臨床心理士の違いについて説明していきます。
公認心理師は国家資格。臨床心理士は民間の資格
一番の違いとして公認心理師は国家資格であり、臨床心理士は民間の資格です。また資格取得までのルートが異なります。
公認心理師は4年制大学+認定施設での実務経験を2年のルートもあるのに対し、臨床心理士は基本的に大学院卒業をするのが前提です。
カウンセラーを目指すならどちらの資格も重要です。最近では公認心理師と臨床心理士どちらの資格も目指せる大学もあります。
現状働き口は少ないが今後は公認心理師が有利になってくる
公認心理師としての採用されている職場がまだ少ないため、待遇はわからない部分も多いですが、臨床心理士は非常勤採用が多い状況です。
将来的には公認心理師が国家資格として誕生しているため、臨床心理士より優遇される職業になると考えられています。
診療報酬上では今まで臨床心理士保有者でも取得できていましたが、2017年より公認心理師に限定されるため、今後需要が増えてくる資格です。
公認心理師の試験とは
公認心理師としての受験資格が得られたら、試験を受けることが必要です。2022年の事例をもとに受験する日にちや試験範囲について紹介します。
2022年現在公認心理師は第5回目の試験を実施中
2022年の公認心理師の試験日としては7月17日の日曜日です。120分間を午前と午後で実施するようなスケジュールです。
しかし毎年スケジュールが一定で決まっているわけではなく、8月〜12月の間で実施されていることが多いため、下半期に実施されることを想定しておきましょう。
試験地は全部で7ヶ所開催
公認心理師の試験を実施している地域は、2022年現在で全国の7試験地にて開催しています。
- 北海道
- 宮城県
- 東京都
- 愛知県
- 大阪府・兵庫県
- 岡山県・広島県
- 福岡県・長崎県・大分県
詳しい試験場所に関しては紹介されていませんが、基本的に上記の7試験地で実施されるとの予定です。
公認心理師の試験範囲の6割以上が合格圏内
公認心理師の試験範囲は、試験設計表であるブループリントというものに記載されています。
試験範囲は公認心理師の中にある分野によって配分があるため、参考にしてみてください。
公認心理師の試験範囲 | |||
公認心理師としての職責の自覚 | ※約9% | 問題解決能力と生涯学習 | ※約9% |
他職種連携・地域連携 | ※約9% | 心理学・臨床心理学の全体像 | 約3% |
心理学における研究 | 約2% | 心理学に関する実験 | 約2% |
知覚及び認知 | 約2% | 学習及び言語 | 約2% |
感情及び人格 | 約2% | 脳・神経の働き | 約2% |
社会及び集団に関する心理学 | 約2% | 発達 | 約5% |
障害者(児)の心理学 | 約3% | 心理状態の観察及び結果の分析 | 約8% |
心理に関する支援(相談、助言、指導その他の援助) | 約6% | 健康・医療に関する心理学 | 約9% |
福祉の関する心理学 | 約9% | 教育に関する心理学 | 約9% |
司法・犯罪に関する心理学 | 約5% | 産業・組織に関する心理学 | 約5% |
人体の構造と機能及び疾病 | 約4% | 精神疾患とその治療 | 約5% |
公認心理師に関係する制度 | 約6% | その他(心の健康教育に関する事項等) | 約2% |
「公認心理師としての職責の自覚」「問題解決能力と生涯学習」「他職種連携・地域連携」についてはあわせて約9%の出題範囲です。
公認心理師の試験範囲として、公認心理師としての職務についてや制度の問題や、専門的な心理学の知識を問うような問題に比重が大きい傾向にあります。
このブループリントというのは毎年見直されていますが、過去の情報を元に傾向と対策を立てておく必要はあるでしょう。
公認心理師の受験資格を取るまでの仕事とは
ここまで公認心理師の資格を取得するまでの流れを見てもらったと思いますが、高校卒業または社会人からの異業種転職含め最低でも6年間は必要です。
大学在学中は基本的に基礎的な知識を中心とする授業が多いため、アウトプットする場も少ないことから実際の仕事場面をイメージしづらいと思います。
仕事内容としては、非常勤の相談業務がおすすめです。理由としては、受験資格の取得までの経験値を積み、学費や生活費を稼ぎつつ進路を考えられるからです。
具体的な例として不登校支援や自治体が運営する適応指導教室、精神科のデイケアがあります。
現状は公認心理師を受験し資格獲得後も就職先は少ない
2017年に新設された資格であるため、医療現場でも公認心理師を置いている職場は少ないのが現状です。
また待遇に対しての調査では、国立精神・神経医療研究センターの公認心理師の職務や実習の実態を明らかにするため全国初の大規模調査したデータがあります。
常勤者の6割弱は年収400万円未満であり、非常勤の平均時給は約5割以上が1600円未満であった。雇用形態は非常に不安定であり、大学院卒の専門職として、良いとは言えない待遇が明らかになった。
常勤でも平均して400万ということであるため、常勤になったとしても現状として待遇は期待できない状態であるということがわかります。
実際の職場環境としては、1〜2人職場が多い
公認心理師として実際的な話になりますが、職場環境としては職員が少数の職場が多いです。基本的に求人としては以下の5つに分かれます。
- 病院や保健所
- 学校のスクールカウンセラー
- 一般企業の企業カウンセラー
- 療育や児童相談所
- 少年院や刑務所の司法
5領域と呼ばれる医療・教育・産業・福祉・司法の求人があります。しかし公認心理師を置く施設が少ないため、1〜2人の職場が多い傾向にあります。
そのため職場環境的に同業者は少ないですが、他職種とのコミュニケーションも取りづらいため、業務で接する職種の人間関係が重要です。
公認心理師になって初職場であれば、病院の医療施設の方が先輩もいることが多いため、医療領域から求人を選ぶことをおすすめします。
公認心理師を受験し資格獲得した後の将来性は
大規模調査で待遇が低かったり、好条件の求人が少なかったりする現状をお伝えしてきましました。そのため、公認心理師は目指すべき職業なのか疑問に感じるでしょう。
結論として需要が増えてくる職業であることは確かです。新型コロナウイルスによる影響やLGBT等、社会情勢は変化し続けています。
その結果として、さまざまな環境の変化から心を病んでしまい、社会生活を送ることが困難になる人が出てきてしまいます。
心の問題を抱えた人に対して、専門性の高い知識を持ちながら支援できる公認心理師は、今後重要な役割を抱えることが期待されている職業です。
公認心理師の受験資格を取った後のビジョンを考えることが大切
専門性は高い資格であるため、人生の中でもとても重要なスキルであることは間違いありません。しかし企業に就職する方向性だと現状厳しい部分もあります。
公認心理師を活かすには、自分のスキルをどのように役立てていきたいかを考えることが必要です。
例えば心の病を抱えた人向けの記事執筆をするライターを目指すといった方向性や、一般向けに心をケアするコツを紹介するセミナーの講師といった方向性が良いでしょう。
臨床心理士も含め、心理の専門職は他の医療職と比べても競合が少ないのがメリットであり、そこを活かして社会に貢献できる働き方も狙える職業です。
公認心理師の受験資格を得るまでや将来性についてのまとめ
公認心理師とは、医療・保健、教育、産業・労働、司法・犯罪、福祉の5領域に渡って心理のスペシャリストとして活躍が期待されている国家資格です。
- 公認心理師の資格を獲得するまでには3つのルートがある
- どのルートを選んでも最低6年はかかる
- 現状公認心理師の待遇は低く、好条件の求人も少ない
- 公認心理師のスキルを活かしながら心理の仕事にこだわらずに活動をすることがおすすめ
資格をとるまでには最低でも6年間かかり、資格獲得後も待遇や好条件の求人も保証されていないことがデメリットです。
しかし現在の社会情勢や多様性の変化で精神的に問題を抱えてしまう人は増えてきており、心理的にサポートできる専門職の需要は高まってきています。
ライターや講師、心理職種以外の働き方を考えながらスキルを活かすことができれば唯一無二の存在になることが可能です。
公認心理師を目指せる学校は130校ありますが、資格獲得のための実習地は大学が優先的に獲得しやすいです。通える場所を考えながら学校を選んでみることをおすすめします。