世間で給料が高いと言われている医師。ぼんやりと高そうというイメージはあるものの、医師の給料の実態については複雑でわかりにくいですよね。
それは医師にもいろんな種類があって、どの種類の医師かによって給料が大きく変わってくるからです。
この記事では医師のキャリアや種類を説明し、どういう医師がどれくらいの給料をもらっているのかを厚生労働省などのデータに基づいて解説しています。ぜひ最後まで御覧ください。
(アイキャッチ画像出典:https://pixabay.com/ja/photos/%e3%83%9e%e3%83%8d%e3%83%bc-wuchang-%e6%b5%81%e8%a1%8c-4823268/)
医師のキャリア
医師の給料はキャリアによって大きく異なってきます。まず一般的な医師のキャリアについて説明します。医師をめざす人は、まず大学の医学部に入る必要があります。
医学部では、卒業試験のかわりに医師国家試験を受けて合格しなければなりません。医師免許をとってからは研修医として2年間ほど働きます。そして勤務医として病院に勤めるのが一般的です。
そのまま一生を勤務医として過ごす方もいますが、開業医といって、自分で病院を立てる医師もいます。
研修医師とは?給料は
研修医師という言葉はあまり聞きなれないかもしれません。研修医師は医師の「卵」のようなものです。とはいっても国家試験に合格して医師免許を持っている段階です。医者とよべるのはこの段階からになるでしょう。
ところが、研修医師の間はまだどの診療科を専門にするかは決めていません。まずは初期研修として、いろんな科を周りながら自分がどの道に進むのかを実際に現場にあたりながら決める期間とも言えます。
そこで専門を定めてからは週に1回のアルバイトが認められるようになります。その時給が1万円となっていますので、そこで稼ぐ人が多いようです。
厚生労働省が発表した平成23年度の推計年収によると、研修医師の給料は1年目で約435万円、2年目で約481万円となっています。
勤務医師の給料
総務省統計局のデータによると、勤務医師の給料は1,098万円となっています。この数字だけ見ると、「やっぱり医師の給料は高いなあ」と思われるかもしれません。
しかし、病院の労働環境はときに「ブラック」とも評されるほど、医師は一般のサラリーマンの比ではないくらいに働いているという現実があります。
厚生労働省によると勤務医師の平均労働時間は週に労働政策研究・研修機構の調査によると、勤務医師の1週間の平均労働時間は53.2時間です。時給換算するとおよそ3,000円ほどとなっています。
アルバイトで時給1万円ですので、医師にとってはアルバイトの方が時給がいいのです。
医師の勤務先による給料の違い
勤務先によっても給料が異なります。勤務医が務める病院は大きく分けて2種類あります。大学病院と市中病院です。
大学病院の場合は20代後半から30代までの給料は300万円から600万円が相場と言われています。教授になると約1,000万円ほどもらえることになります。
一方で市中病院の場合は勤務した年から600万円から800万円ほどもらえ、年次が上がるにつれて給料もあがっていき、部課長クラスで1,500万円、院長で2,000万円ほどになります。
こう見ると、市中病院の方が待遇が良いように見えますが、大学病院では高度で専門的な疾患の治療を行う機会が多く、有益で豊富な経験を積むことができます。
診療科による違い
医師と一口にいっても、その給料は診療科によって異なってきます。
脳神経外科 | 1,480万円 |
産婦人科 | 1,466万円 |
外科 | 1,374万円 |
麻酔科 | 1,335万円 |
整形外科 | 1,289万円 |
呼吸器科 | 1,267万円 |
内科 | 1,247万円 |
精神科 | 1,230万円 |
救急科 | 1,215万円 |
小児科 | 1,220万円 |
放射線科 | 1,103万円 |
眼科 | 1,078万円 |
どの科も年収1,000万円を超えていますが、年収が一番高い科と低い科で約400万円ものひらきがあります。科によってかなり給料が違うということがわかりますね。
(出典:https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf)
開業医師の給料
厚生労働省の調査によると、開業医師の平均年収は2,763万円となっています。
ただ、注意すべきことは、開業医は勤務医と違って必ず決まった額がもらえるわけではないということです。経営している病院の評判が悪化して患者が来なくなってしまったら、借金を作ってしまうことだってあるのです。
開業医として病院を軌道に乗せるのには、医師としての腕だけではなく、経営に対する理解が求められてきます。
ジャンルによる違い
厚生労働省によると、開業医の診療科別の収入は以下のようになります。
産婦人科 | 4,451万円 |
眼科 | 3,377万円 |
整形外科 | 2,998万円 |
小児科 | 2,827万円 |
皮膚科 | 2,792万円 |
耳鼻咽喉科 | 2,597万円 |
内科 | 2,582万円 |
精神科 | 2,455万円 |
外科 | 2,020万円 |
「医者は高給取り」という一般のイメージに合致する数字ですね。ただし、これらの金額がまるまるもらえるわけではありません。
税金は高額所得者になればなるほどより多くの割合が天引きされます。また、自分で病院を運営しているので、この中から病院の設備投資に回さなければなりません。
(出典:https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/database/zenpan/jittaityousa/dl/22_houkoku_iryoukikan.pdf)
フリーランスの医師の働き方とは?給料はどうなる?
医師でフリーランスというのはあまりなじみがないかもしれません。
医師にとっては勤務医師として働くよりもアルバイトの方がお金の面では効率がいい、ということを勤務医師のところで書きました。
それを利用して、あるひとつの病院に勤務するとういう形ではなく、非常勤で転々とアルバイトをするという生計の立て方をしている人も少なくありません。
時給制なので給料に関しては、働く時間によって変わってきます。ふつうのアルバイトと違って時給がいいので、フリーランスで年収数千万というケースもあります。
医師の給料は将来どうなるか
医師の年収は、今後徐々に下がっていくと考えられます。なぜなら、医療費を削減しようとしているからです。もし、人件費が削減されれば、国の予算ベースで運営している公的病院は給与を下げざるを得ませんよね。
また、昨今の医学部人気に伴って、医学部のある大学の数が増えています。それによって医者の数は将来もっと増えるだろうと予測されています。そうなると医者一人当たりの給料は減るだろう、と考えるのは自然ですね。
医師の給料まとめ
医師の給料についていろんなケースに分けて詳しく解説してきました。医師と一口に言ってもいろんな形態の働き方があり、それに応じて給料も大きく変わってくることが理解できたのではないでしょうか。
医師という職業は基本的に高給ですが、過酷な労働環境で働いている医師も少なくありません。額面だけを見て「儲かりそうだし医者にでもなろうかな」という考えは避けた方がよいでしょう。
「苦しんでいる人を助けたい」という利他の精神がモチベーションにならないと、大変責任ある医師の仕事は務まらないのかもしれません。