家賃による安定収入が魅力的な不動産投資。その中に100万円程度から購入できる「小口化商品」というものがあります。
不動産オーナーにはなりたいけど「物件の選定から購入、管理に自信がない」「多額の融資を受けてまで不動産を購入し、失敗したらどうしよう」そんな風に考えている方に検討してほしいのが小口化商品です。
本記事では小口化商品の基本事項からメリット、デメリット、ほかの投資方法との比較などに焦点を当てて解説しています。ぜひ最後まで読んでみてください。アイキャッチ画像出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2893018
不動産投資の小口化とは
将来的な価格の値上がりや安定した家賃収入を見込める不動産は、価格も相当な金額になりなかなか手が出るものではありません。
そうした中、事業者が高層マンションや商業施設などの不動産を購入、小口化して複数の投資家に出資してもらう商品が出てきました。それが「不動産小口化商品」です。
小口化商品は一口数万円~100万円の価格で購入でき、投資家は不動産が生み出す収益を分配金として受け取れます。
一般的な不動産投資との違い
一般的な不動産投資も、賃料収入や物件の値上がりを期待してマンション1棟もしくは1室を購入します。物件を担保としてローンを組むため、手持ちの資金より高額な不動産を購入することも可能です。
リスクを背負うことになりますが、得られるリターンも大きくなる可能性があります。対して小口化商品は得られた利益を分配するためリターンは少なくなりますが、少額な資金でも優良な物件に投資できるのが強みです。
また一般的な不動産投資では物件の維持管理を投資家が行いますが、小口化商品だと事業者がやってくれるため自分で動く必要がありません。
小口化商品の販売は不動産特定共同事業者
小口化商品は「不動産特定共同事業法」に基づいて、国土交通大臣や都道府県知事の認可を受けた事業者が販売しています。
事業者になるには一定以上の資本金や宅地建物取引業免許の有無など、いくつかの条件を満たすことが必要です。
不動産特定共同事業法は2013年、2017年、2019年と幾度の法改正を経て、改善され続けています。
そうした不動産特定共同事業法のもと販売される小口化商品は、ある程度の信用をもって取引できる投資商品といえるでしょう。
小口化商品の種類
小口化商品の種類は3つの型に分けられます。「任意組合型」と「匿名組合型」、「賃貸型」の3つです。それぞれについて詳しく解説していきます。
任意組合型
任意組合型は事業者と投資家が組合を作り、一体となって不動産投資を行います。投資金額は一口100万円から、運用期間は10年以上となるケースが多いです。
組合として不動産を購入し、投資家は口数に応じて持ち分を購入する仕組みとなります。投資家は分配された収益を、事業者は不動産を運営して理事長報酬を得るやり方です。
任意組合型は「現物出資」と「金銭出資」の2つに分けられ、それぞれに違った特徴があります。
現物出資とは
現物出資とは投資家が購入した不動産の持ち分を、組合に出資する枠組みをいいます。この枠組みを選ぶメリットは投資家が自分の名前で不動産登記を行い、不動産を所持していることを他者に証明できる点です。
登記にかかる費用は別途、負担しなければならない点がデメリットといえます。
金銭出資とは
金銭出資とはその名の通り、投資家が組合に対して金銭のみを出資することです。現物出資と大きく違うのは投資家が不動産登記できない点で、手続きは事業者が代表して行います。
投資家が不動産を所持していることは変わらないため、特にリスクがあるわけではありません。登記は行わないので費用を用意する必要もないです。
匿名組合型
匿名組合型は不動産を購入した事業者が主体となり事業を行います。金銭だけのやり取りであることが多く、事業者と投資家の関係は1対1の契約でほかの投資家の名前を見ることはありません。
事業者に投資家が出資するという形になるので、不動産を所持することにはなりません。メリットが少ないように感じますが、「優先劣後出資」というシステムを採用している事業者が多いことに注目です。
優先劣後出資とは元本割れのリスクが高くなったとき、事業者よりも投資家を優先して資金を返還する仕組みをいいます。そのため任意組合型と比べ、元本以上の損失を受けるリスクが少なくなるのが特徴です。
投資金額は一口数万円から、期間も数か月ほどの短期運用である点も投資初心者に向いているといえます。
賃貸型
賃貸型は特定の不動産を複数の投資家で購入し、事業者に貸し出して管理してもらう形になります。任意組合型の現物出資と同じく投資家は不動産登記され、事業者は不動産の所有者とならない点が特徴です。
事業者が倒産した場合の対応が難しくなるのが賃貸型のデメリットとなります。購入に必要な資金は、任意組合型と同程度の傾向ですが商品の数は少ないです。
不動産投資小口化のメリット
それでは不動産投資の小口化によって、投資家が得られる恩恵とはどういったものがあるのか解説していきます。販売されている不動産小口化商品のメリットは次の5つです。
- 不動産を保有
- プロ選りすぐりの物件から投資
- 面倒な管理が必要ない
- リスクを分散しやすい
- 相続税対策にも
不動産を保有
任意組合型で現物出資すれば、不動産登記簿に記名され物件の所有者となります。仮に事業者が倒産したとしても、自分の資産として残すことが可能です。
プロ選りすぐりの物件から投資
将来的な価値の下落や空き室リスクを回避するためのポイントは、物件の選定によるところが大きいです。
それゆえ不動産投資を成功させるための重要なカギとなるのですが、経験が少ないと判断が難しく決断できないのが予想できます。
小口化商品は不動産のプロがピックアップした物件の中から選ぶ形になるため、不動産投資初心者が選定するよりはリスクを抑えられるのが現実です。
またプロが選ぶのは高層マンションや大型商業施設も多いため、個人では購入しづらい物件にも出会える可能性があります。
面倒な管理が必要ない
小口化商品で購入した不動産の管理はすべて事業者が行います。入居者の募集や修繕計画、トラブルやクレーム対応などの手間は一切必要ありません。物件の管理を専門とした会社が運営してくれます。
リスクを分散しやすい
投資ではリスクを分散するのが基本ですが、ひとつの物件が高額になる不動産投資ではそうはいきません。
手持ちの資金が豊富であればリスクを分散することも可能ですが、一般的な投資家には難しいでしょう。ですが一口が少額で済む小口化商品なら、複数の物件を購入しやすくリスクを分散できる利点があります。
相続税対策にも
少額で不動産を購入できること以外に、小口化商品の大きなメリットとして注目されるのが相続税対策になる点です。また相続税だけでなく、贈与税も同様のメリットを受けられます。
節税効果を狙って小口化商品を選択する投資家も増加傾向です。ちなみに節税効果を受けられるのは、税法上の取り扱いが不動産所得となる「任意組合型」と「賃貸型」になります。
それでは小口化商品が節税対策になる理由について、もう少し詳しく解説していきましょう。
小口化商品が節税対策になる理由
不動産を相続する場合の税金は、土地の路線価および建物の固定資産税評価額がポイントとなります。
土地の路線価および建物の固定資産税評価額は国土交通省が発表する公示価格の7~8割程度といわれていて、この数値を根拠に相続税評価額が決まる仕組みです。
実勢価格(実際に取引する場合の価格)は公示価格の1.1~1.2倍になることが多いので、実際の資産よりも低い価値で計算された相続税を払うことになります。
注意点として不動産の価値が下がれば大きな節税効果は生まれないこと、不動産の所有者になれない匿名組合型の小口化商品では適用されないことです。
不動産投資小口化のデメリット
マイナス面がまったくない投資商品はありません。不動産小口化商品のデメリットは次の5つとなります。
- 融資が受けられない
- 元本や賃料収入の保証なし
- 選択肢が多くない
- 利回りが低いケースも
- 中途解約が難しい
融資が受けられない
小口化商品を購入する場合、通常の不動産購入のように融資を受けることができないので注意が必要です。小口化商品で物件を購入しても、共同所持となるため抵当権を設定できません。
抵当権はローンの返済が滞った場合に備えて設定するものですから、おのずと小口化商品での融資は受けられないことになります。したがって少額とはいえ自己資金を用意する必要が出てきます。
元本や賃料収入の保証なし
投資はリターンを得るために行うものですが、ある程度のリスクも背負わなければなりません。
小口化商品も例外ではなく、状況によっては元本以上の損失を被るケースもあります。元本や賃料の保証はありませんので、その点は十分理解して投資を行いましょう。
選択肢が多くない
小口化商品が投資手法として認知されだしたのは1980年代です。その後、小口化商品によるトラブル解消のため「不動産特定共同事業法」が1995年に制定されました。
このように小口化商品の歴史は比較的新しく、ほかの投資手法に比べて商品の選択肢は少なくなってしまうのが実情です。
また少額で可能な不動産投資のため、人気が高く募集がかかるとすぐに売り切れてしまう点も選択肢を狭めています。
利回りが低いケースも
小口化商品の特徴として、物件の管理に関する手間がかからない点を挙げました。つまり物件の管理会社に対してコストが発生するということです。
不動産で得た収益からコストを差し引いた残りが利益になるので、管理や維持を自己で行う場合と比較して利回りが低くなる傾向が見られます。
目安として一般的な不動産投資の利回りは5~10%、それに比べて小口化商品の利回りは2~5%と低い状況です。
中途解約が難しい
小口化商品は原則として、中途解約を受け付けないことが多いです。仮に受け付けてもらえる商品でも、中途解約イコール売却ですので買い手が必要になってきます。
事業者が買い取ってくれるケースもありますが、市場価格よりもかなり安い値段になるのは避けられません。中途解約の可能性があるならば事業者や購入する商品のルールについて、前もって調べておくことが大切です。
小口化商品はこんな人がおすすめ
これで小口化商品の基本知識、メリットやデメリットの解説などは終了です。今までの情報を総合して、小口化商品がどんな人に向いているかをまとめてみると次のようになります。
- 少ない資金で不動産投資をしたい人
- 物件の選定に自信がない人
- 不動産を所持したいが物件の管理に自信がない人
- 不動産投資でリスクを分散したい人
- 相続税対策や財産分与を考えている人
逆に小口化商品がおすすめできないのは、リスクを負ってでも大きなリターンを望む人です。一般的な不動産投資や株式など、ほかの投資方法を検討してみてください。
小口化商品に近い金融商品REIT【不動産投資信託】について
REIT(リート)とは不動産投資信託とも呼ばれる金融商品の一種です。複数の投資家から資金を募り不動産に投資、得られた利益を出資した投資家に分配します。
小口化商品と違うのは投資家が購入するのが証券である点です。もっとわかりやすくいうと投資家は事業者の株式を購入することで投資を行うことになります。
小口化商品と同じように少額で投資できること、リスクを分散できることが利点となりますが、不動産の所有者とならない点は注意が必要です。
株式を保有するだけなので、小口化商品のような節税効果がないのも理解しておきましょう。
【まとめ】不動産投資が初めてなら小口化商品を
これまで見てきたように不動産小口化商品は、投資初心者にも挑戦しやすい手法です。しかしながらリスクがまったくないわけではなく、状況によっては元本割れも考えられます。
まずは小口化商品が自分の投資スタイルに合っているか、しっかり検討してみましょう。また小口化商品は購入する物件を、自分の目で確かめることもできます。
建物の立地や将来性も十分勘案した上で、夢の不動産オーナーを目指してみてください。