犬と生活する上で「待て」のしつけができていることはとても重要です。
大切な犬を危険から守るだけでなく、他者へ危害を加えないために「待て」の指示がいつでも通るようにトレーニングしておきましょう。
しかし、ゼロから「待て」を犬に教えるのは簡単ではありません。
「なかなか我慢できるようにならない」「犬にストレスを与えてしまっているかもしれない」といった悩みはつきものです。
今回は、犬に「待て」をしつける手順やコツ、うまくいかないときの対処法を詳しく解説します。大切な犬と絆を深めながら正しく「待て」をマスターできるよう、ぜひ最後までご覧ください。
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犬に「待て」をしつけるのは何故?
犬に「待て」をしつける理由は3つあります。
- 犬を危険から守る
- 他者に迷惑をかけない
- 犬との絆を深める
ひとつずつ解説していきます。
犬を危険から守るため
犬は好奇心旺盛で、さまざまな刺激に興味をもちます。とくに動くものが大好きで、鳥や猫、道路を走る車などを見つけると追いかけたくなってしまいます。
動くものを追いかけて家から脱走してしまったり、散歩中に道路に飛び出してしまったりすることは犬にとって非常に危険です。
大切な犬を危険から守るために、しっかりと「待て」をしつけることが重要です。
他者に迷惑をかけないため
他者に迷惑をかけないことは犬を飼育する上で最低限守らなければならない事項の一つです。
「待て」の指示が通るようトレーニングすることは、犬と飼い主にとって、公共のマナーを守り、他者へ危害を加えることを防ぐために非常に重要となります。
犬との生活の中で、特に公共の場所では「待て」が必要になる場面がたくさんあります。そういった場面で他者へ迷惑をかけないために、しっかりと「待て」をマスターさせましょう。
犬との絆を深めることができるから
犬に「待て」をしつけることで、飼い主との絆を深めることができます。
犬が「自分の欲求を抑えて飼い主の指示に従って待つ方が、いいことがある」「飼い主は自分を守ってくれる」と覚えることで、犬と飼い主との間に信頼関係が生まれます。
信頼関係を築くと、日々のコミュニケーションの中で愛情が伝わりやすくなり、犬と飼い主の絆をより深めることができるでしょう。
犬にしつけるべトレーニングの順番
犬をしつける上で重要なのがコマンドです。コマンドとは、犬に行動してほしいときに飼い主が出す指示のことをいいます。
犬にさまざまなコマンドを教えることで、犬が生活の中でとるべき行動を飼い主の指示によってしっかり守らせることができます。
犬をしつける上で重要なコマンドは以下の5つです。
- おすわり
- 待て
- おいで
- トイレ
- ハウス
この5つをしつけることで、犬は安全で健康的に生活することができます。
例えば「おすわり」や「待て」ができないと、犬が信号待ちで飛び出してしまいそうなとき制御できず危険です。「トイレ」を覚えさせることで衛生的に暮らすことができます。
また、これら1〜5の指示が通るレベルの信頼関係が犬と飼い主の間にないと、健康観察や予防接種で動物病院の獣医らと関わることが難しくなる可能性があります。
このように、犬が安全で健康的な生活を送れるようにするためには、5つのコマンドをしつけることが重要といえるでしょう。
トレーニングする順番は1〜5の順がよいでしょう。
「おすわり」がまだできない場合は「待て」をしつける前に「おすわり」を覚えさせる必要があります。
「待て」の基本姿勢は「おすわり」をした状態です。
まだ「おすわり」のしつけができていない場合は、以下の動画を参考にトレーニングしてみましょう。
出典:犬のしつけ 誰にでも簡単にできるおすわりの教え方/犬のしつけチャンネル / ドッグトレーナー 金倉 高志
「おすわり」をマスターしたら、「待て」のトレーニングに移ります。
犬のしつけを始める前に優先して行うべき「社会化練習」を解説
犬を家に迎えてまだ間もない場合、「待て」等のしつけよりも社会化練習や安心して体を触らせてくれるようになることを優先する必要があります。
社会化練習とは、新しい飼い主のもとでさまざまな場所や人との触れ合いを体験させ、社会に順応する力をつけていくことです。
特に子犬の場合は社会化練習が大切です。
子犬は生後3週〜14週までに体験したことを通じ、身の回りや外の環境に順応していくといわれています。
この期間を「社会化期」と呼び、社会化期にどのように過ごすかによって子犬の性格や社会性に大きな影響を与えます。
社会化期に不適切な経験を積んでしまうと、他のイヌや人あるいは見慣れない環境に対する恐怖・不安や攻撃性の影響を上昇させてしまうことが明らかになっている。
引用:イヌの飼い主を対象としたパピークラスに関する調査/酪農学園大学獣医学群獣医保健看護学類動物行動生態研究室
子犬の時期に留守番ばかりさせたり、飼い主と触れ合う時間が短かったりすると、成犬になってからもさまざまなものを怖がってしまいます。
社会化練習を積み、犬と一緒に訪れる可能性のある場所や、健康管理のため触れ合う必要がある人に慣れさせていくことが重要です。
そのため犬にしつけを始める時期は、社会化練習の重要性を踏まえつつ、犬を迎え入れて1〜2週間後で犬が家に慣れリラックスできる状態になってからにしましょう。
「待て」をしつける環境
「待て」のしつけを始める前に、トレーニングを行う環境について確認しておきましょう。
しつけを行う際は、集中できる環境で行うことが重要です。
静かな室内や庭で、犬と飼い主が集中してトレーニングできる環境を整えます。公園や道路など、犬にとって誘惑が多い場所はしつけを行う環境として不向きです。
まずは集中できる環境で「待て」を覚え、ステップアップとして公園や道路での「待て」に挑戦しましょう。
犬に「待て」をしつける手順6ステップ
いよいよ、犬に「待て」をしつける手順を解説していきます。
はじめに、犬に「待て」をしつける際には「おすわり」ができる状態であることを確認しておきましょう。
「待て」の基本姿勢は「おすわり」ですので、犬がまだ「おすわり」できない場合はまず「おすわり」をしつける必要があります。
犬に「待て」をしつける手順は次の6ステップです。
- 「おすわり」をさせる
- おやつを見せて「待て」を指示
- 時間がきたら「よし」で解除しておやつを与える
- 少しずつ時間を伸ばす
- 慣れてきたら距離も伸ばしていく
- 場所を変えても待てができるようにする
順に解説していきます。
「おすわり」をさせる
犬に「おすわり」をさせます。「待て」の基本姿勢は「おすわり」をした状態です。
飼い主がおやつを持ち「おすわり」の指示を出しましょう。
おやつを見せて「待て」を指示
犬におやつを見せ「待て」と指示します。
このとき、声での指示とあわせてハンドサインでも「待て」を示しましょう。犬は音で指示を聞き分けるのが得意ではありません。
それゆえ、同時にハンドサインでも「待て」を示すことで、指示が通りやすくなります。
時間がきたら「よし」で解除しておやつを与える
犬が「おすわり」の姿勢でおしりを地面につけているうちに「よし」と言って「待て」の指示を解除します。
「待て」ができたことを褒めながら、最初に見せたおやつを与えましょう。
「待て」を解除するときのポイントは以下の通りです。
- 犬がおしりを地面につけているうちに解除して「待て」を成功させる
- 解除の前に動いてしまった場合はおやつを与えず、時間を短くして再挑戦
「待て」をしつけるためには「指示通りに待っているとご褒美がもらえる=いいことがある」と犬に理解させることが重要です。
上記のポイントを意識してトレーニングしましょう。
少しずつ時間を伸ばす
「待て」の指示から解除までの時間は、はじめは1〜2秒から始めましょう。指示が通るようになってきたら、少しずつ解除までの時間を伸ばしていきます。
時間を伸ばす際も、犬がおしりを地面につけているうちに解除して「待て」を成功させるようにします。
慣れてきたら距離も伸ばしていく
5〜10秒ほど待てるようになったら「待て」の状態で一歩ずつ距離を取って離れてみましょう。「待て」を解除しておやつを与える際は犬の前に戻ります。
後ろに下がるだけでなく前後左右に動いても「待て」を継続できるようにしたり、犬の横に立って「待て」を指示しても通るようにトレーニングするのも効果的です。
場所を変えても待てができるようにする
静かな室内や庭など、犬が集中できる場所で「待て」ができるようになったら、ステップアップとしてお散歩の途中や公園など犬にとって誘惑の多い場所でも「待て」ができるようトレーニングしていきましょう。
外出先でも安定して「待て」ができるようになれば、しつけ完了です。
「待て」がうまくできるようにならないときの対処法
犬が集中できる環境、正しい手順で「待て」を教えてもうまくいかないときは、あせらず一段階前に戻ってみましょう。
「待て」を30秒続けられない場合は15秒に戻り、成功したら褒めてあげます。途中で動いてしまっても叱らず、少しずつトレーニングを進めましょう。
「待て」ができる時間は短くても、成功したことを褒めてトレーニングを終えるのが理想です。
なかなか「待て」が上達しないときは、あせったり叱ったりせず以下の4点を確認してください。
1.集中力が切れていないか
犬の集中力は一般的に5〜10分程度といわれています。
犬が飽きてしまう前にトレーニングを一旦終了したり、途中に遊びの時間を挟むなどして気分転換させましょう。
2.興奮したり、気が散っていないか
犬が興奮していたり気が散っていると、指示がうまく通りません。「待て」の指示を出すときは犬の意識を飼い主に集中させるようにしましょう。
3.環境が普段と違っていないか
しつけのステップアップをする際はいきなり環境を大きく変えず、少しずつ変化を与えるようにしましょう。「どんな環境でもやることは同じ」と犬に教えることが重要です。
4.音だけで判断するのが難しい可能性がある
犬は人の言葉を聞き分けるのが得意ではありません。
言葉で指示をすると同時にハンドサインをつけて覚えさせることで、犬にとって指示と動作の意味が結びつきやすくなります。
以上4点に注意しながら、あせらず一段階前に戻ってトレーニングしてみましょう。
なかなか犬が「待て」を覚えず心配になることもありますが、あせらず楽しみながら進めることが重要です。
昨日できたことが今日できなくても大丈夫。1か月で1分程度「待て」ができるようになれば十分です。
犬に「待て」をしつけるコツ3選
犬に待てをしつけるコツは以下の3つです。
- 犬も人も楽しんでトレーニングしよう
- 「待て」の指示の出し方を家族で統一しよう
- 「待て」ができたら犬をたくさん褒めよう
一つずつ解説していきますので、参考にして犬に「待て」をしつけていきましょう!
犬も人も楽しんでトレーニングしよう
「しつけ」というと厳しく指導することを連想するかもしれません。しかし、犬にとって飼い主は親のような存在。
上下関係を作って制圧するようなしつけは、犬と飼い主の信頼関係が崩れる原因となります。
遊びやゲームの感覚で、犬も飼い主も楽しみながらトレーニングを行えば、お互いの絆を深めながら「待て」をしつけることができます。
「待て」の指示の出し方を家族で統一しよう
「待て」の指示の出し方は、家族で統一しておきましょう。人によって指示の出し方がばらばらでは、犬が混乱してしまいます。
言い方は「待て」なのか「ステイ」なのか、ハンドサインの出し方をどうするかなどをあらかじめ決めておくとよいでしょう。
「待て」ができたら犬をたくさん褒めよう
「待て」ができたら犬をたくさん褒めましょう。たくさん褒めることで犬は楽しんで学習できます。また、褒めるだけでなくご褒美としてたくさん遊んであげるのも効果的です。
しつけが犬のストレスになっていると感じたら
「待て」の最中に犬がよだれを出したり震えたりすることがあります。その様子を見て、かわいそうに思うこともあるでしょう。
しつけは犬の安全や快適な生活、健康を守るために必要なものです。
では、犬にストレスを与えることなくしつけるには、どうしたらよいのでしょうか。
よだれや震えの原因は、犬にとって「待て」をさせられている対象(おやつ)への興味や興奮が強く表れていることです。
精神的に未熟な犬によく見られる症状ですが、トレーニングを重ねるうちに症状はなくなり安定して「待て」ができるようになります。
しつけが犬のストレスにならないよう、5〜10分おきに気分転換させたり、成功したことを褒めてトレーニングを終えましょう。
犬が楽しみながら学習することで、ストレスなく「待て」をマスターできます。
ごはんを対象に「待て」をしつけるのはNG!その理由は?
ご飯を対象に「待て」をしつけると「おあずけ」の状態となってしまい、犬にとって良くありません。
「おあずけ」はご飯の前で犬を待たせる指示ですが、不必要に長い時間待たせる「おあずけ」は犬の不信感を強くしたり、ご飯への執着が強くなってしまう可能性があるのでやめましょう。
同じ理由で「待て」のトレーニングもご飯を対象にせず、おやつを使って行いましょう。
あせらずに犬と向き合って「待て」をしつけてみよう
今回は、犬に「待て」をしつける際の手順やポイント、うまくいかないときの対処法を解説しました。
犬に「待て」をしつける手順は以下の通りです。
- 「おすわり」をさせる
- おやつを見せて「待て」を指示
- 時間がきたら「よし」で解除しておやつを与える
- 少しずつ時間を伸ばす
- 慣れてきたら距離も伸ばしていく
- 場所を変えても待てができるようにする
犬に「待て」をしつける際のポイントは以下の通りです。
- 犬が集中しやすい環境から始める
- ハンドサインをつける
- 失敗してもあせらない、叱らない
- 成功したことを褒めてトレーニングを終える
- 犬も人も楽しんで行う
大切な犬に「待て」をしっかりしつけることで、犬との生活が快適になるだけでなく、犬の安全を守ったり飼い主と犬の絆を深めることができます。
すぐに「待て」ができるようにならなくても大丈夫ですので、あせらず犬との信頼関係を築くことに重点を置いて取り組んでみてください。
- 名前:佐々木小春