犬や猫を飼っている人なら一度は経験したことがある突然の「嘔吐」。急に吐くから最初はびっくりしますよね。そこで血が混じるような赤っぽい色の嘔吐物を見たことはあるでしょうか?
「赤っぽいけど…いつも吐いてるから大丈夫だろう」なんて考えていると、その嘔吐が実はなにかの病気のサインで命に係わるものだった…なんて事もあり得ます。それだけ嘔吐から読み取れることは多いのです。
犬が吐いているのを何度も見ていると色んな嘔吐物を見る事になります。嘔吐物や色も様々で色んなパターンがあるので「もしかしてさっき食べたアレが原因…?」と思い当たることがあったりするかもしれません。
こちらの記事ではそんな嘔吐の原因や種類、血が混じっていたり嘔吐後の危険なケースなどの対処の仕方を紹介しています。突然の嘔吐に慌てずに正しい対処が取れるように、是非最後までお付き合いくださいね。
出典:https://pixabay.com/ja/photos/%e5%ad%90%e7%8a%ac-%e6%b3%a5%e3%83%91%e3%83%94%e3%83%bc-%e5%ad%90%e7%8a%ac%e3%81%ae%e9%81%8a%e3%81%b3-5413165/
同じなようで違う!犬の「嘔吐」と「吐出」
吐き出す動作をして口から何かを吐き出すことを、ほとんどの飼い主さんは「犬が吐いた」と言うでしょう。一見すると同じ「吐く」という動作ですが、口から出るまでの仕組みが異なるのです。
大きく分けると、食べたものや飲んだものが胃に入ってからの排出が「嘔吐」で、胃に入る前に排出されるのが「吐出」となります。
嘔吐は食後しばらくしてから起こる事が多く、消化された物や胃液混じりがほとんどです。逆に吐出の場合は飲食をした直後に起こることが多く、主に未消化で吐き出されます。
ポイントは嘔吐物の内容と吐いたタイミング。未消化の物を吐いたら吐出、それ以外は嘔吐とある程度は判断していいでしょう。
血が混じる事もあり得る。犬が嘔吐する主な原因
人間に比べると体の構造上、犬は嘔吐をしやすくなっています。もちろん病気が原因の嘔吐もありますが、生理現象で吐くことが多いです。
犬が吐く原因として4つあげられます。良くあることから気付きにくいもの、中には血が混じるようなケースも。仔犬のうちに起こりやすいものもあるので注意して見てあげましょう。
- ゴハンの食べ過ぎ・早食い・水の飲みすぎ
- 食べ物以外を誤飲
- ストレスや不安
- 食べ物によるアレルギー反応や中毒の症状
ゴハンの食べ過ぎ・早食い・水の飲みすぎ
先程も言いましたが吐くという行為は生理現象の一種です。ゴハンを食べすぎたり、早食いであったり、水の飲みすぎなどで吐く場合などは体を守るための嘔吐になります。
食事の量で解決が出来るので、頻繁に続かなければ心配はいりません。また散歩中に雑草を食べて吐くことも体を守るためであり、胸やけの解消に繊維質を摂るため草を食べていると考えられています。
食べ物以外を誤飲
オモチャや口に咥えられる小さなもの、散歩中に落ちているなにかを誤って飲み込んでしまう事を「誤飲」といい、これも嘔吐の原因の一つです。
特に仔犬の時期に多く見られ、好奇心が強いため何でも口にしてしまいます。誤飲は飼い主さんが気を付けていれば防げるものがほとんどなので注意しておきましょう。
異物を出すため繰り返し嘔吐したり、何度も吐く動作を行うこともあります。吐き出しきれば元気になるかもしれませんが、異物が消化器官などを傷つけて血混じりの嘔吐をする可能性もあります。
場合によっては腸閉塞を起こすこともあり、早めの処置をしないと命の危険があるほどの大事になってしまうかもしれません。
ストレスや不安
ストレスを感じていたり精神的に不安な状態でいると吐いてしまう事もあります。引っ越しなどで環境が変化した、コミュニケーション不足、散歩や遊びの時間に不満があるなどが考えられます。
性格や個体差があるので、思わぬものがストレスの原因になるので挙げればキリがありません。長く続くと胃潰瘍を起こしたりするので、出来るだけストレスや不安を与えないように気を付けましょう。
食べ物によるアレルギー反応や中毒の症状
人間と同じように食べ物のアレルギーが原因で嘔吐をすることもあります。食べたことのないもの(食べなれないモノ)を食べたりフードを変えたりした時に起こりやすいです。
また食べてはいけないもの(例えばチョコレートやネギなど)では無くても摂取しすぎて中毒症状を起こす事もあり、食べ慣れていても稀にアレルギー反応が起こり嘔吐をしてしまう事もあります。
事前に食べていいものかを把握するのはもちろんですが、食べていいものをあげる場合も少量ずつにしておきましょう。
血混じりの嘔吐も「喀血」と「吐血」の2種類ある!
肺や気管支などの呼吸器が炎症を起こしていたり傷ついていたりして、咳きこんだ時に吐き出す血の事を喀血(かっけつ)といいます。鮮血であるのが特徴で泡が混じる事も。
呼吸器が関係する病気のほか、打撲やケンカが原因で肺や気道が傷ついてしまう事などが原因になります。
胃や十二指腸などの消化器系が炎症したり傷つくことが原因で、体内で出血が起こったものが吐き出されたものが吐血(とけつ)です。
一見すると喀血と同じに思いますが、体内で出血して少し時間が経っていることから色は黒っぽく粘り気のあるのが特徴。消化しきれなかった食べ物や胃液が混じっている事もあります。
血が混じる様な赤い嘔吐物はキケンなサイン!?
薄いピンク色や赤色をした液体が混じっている嘔吐は、体の中で何らかの異常が起きているサインで、口の中や食道・胃や腸から出血をしている可能性が高いです。
軽度の場合は口の中が傷ついているぐらいで、薄い赤は食道付近の炎症、濃い赤色の場合は粘膜からの出血の可能性があります。出血してから吐くまでの時間が長いほど色は濃く黒くなる傾向になります。
重度の場合は胃潰瘍や十二指腸炎、腫瘍の破裂や呼吸器系からの出血があったり、赤黒い血の塊を吐き出した時は胃がんの可能性があったりと原因をあげるとキリがありません。それぐらい赤い嘔吐は危険が伴うのです。
いずれにしてもやるべきことは、赤い嘔吐をしたらかかりつけの獣医さんに一刻も早く診てもらいましょう。
血が混じる嘔吐をした時の愛犬への応急処置
嘔吐をしたら人間でも犬でも心配になるものです。犬が生理現象で良く吐くとはいえ、頻度や内容物によっては危険度があり、一歩間違えれば手遅れになりかねません。
そんな時に飼い主として出来ることは限られます。応急処置としてですが出来る事を紹介します。
- とにかく動物病院へ
- 半日程度の絶食をする
- 口の中の異物を取り除く
とにかく動物病院へ
当たり前なことですが、最良な方法は動物病院に連れていくことです。素人目に見ても原因が分かる事は少なく、もし分かったとしても打てる手はほとんどありません。
嘔吐の頻度にもよりますが何らかの病気が発症している可能性が高く、血が混じるような嘔吐となると尚更です。体内のSOSを見逃して手遅れにならないよう一刻も早い診察が一番大切な事でしょう。
半日程度の絶食をする
出血の量や色によっては粘膜が傷ついているだけであったり軽い胃腸炎の可能性があるので、そんな時は半日から1日程度の絶食を試してみるのも良いでしょう。
もしそれで嘔吐が収まってきたら、少しづつ消化のいい食べ物と水をあげてください。2~3日ほど続けてみて異常がみられなければ、徐々に元に戻していけば大丈夫です。
口の中の異物を取り除く
口の中に異物が刺さりそれが原因で血が混じる嘔吐をしている場合、取り除いて圧迫止血(指などで患部を抑える)をします。
ですが異物の形によっては無理に取り除こうとすると、かえって傷をつけてしまう恐れがあります。その場合はすぐに診察を受けましょう。
血が混じる以外で注意すべき愛犬の嘔吐とは
血が混じるような嘔吐はキケンだと言いました。「じゃあそれ以外なら大丈夫」なのかというとそんなことはありません。いままでは吐いた内容物に注意をしていましたが、今度は吐いた後を見てみましょう。
以下に5つの症状を書きましたが、いずれも何らかの病気を発症している可能性があります。血が混じっていなくても当てはまる症状が出た時は大変危険です!スグに行動を起こしてください。
- 何度も嘔吐をする
- 吐く仕草をするが吐けない
- 吐いた後ぐったりしている
- 一緒に下痢も併発
- 震えがある
何度も嘔吐をする
1~2回吐いても元気で食欲もあり、ほかに目立つ症状がなければそこまで慌てなくて大丈夫です。注意すべきは何度も嘔吐を繰り返す時です。
飲み込む動作に障害が出る「嚥下障害(えんげしょうがい)」の可能性もあり、放っておくと栄養不良や脱水症状を起こしたり、のどに詰まって窒息したりする可能性があります。
また1日に何度も吐くのは異物の誤飲や消化器系の病気、感染症などを引き起こしている可能性も考えられます。
吐く仕草をするが吐けない
犬が苦しそうにしていて吐く仕草をしているのに吐けない時が。そんな状態の時は「胃拡張・胃捻転」の可能性が高いです。
胃が捻じれてしまう症状を「胃捻転」、胃の中が多量のガスで膨れ上がる症状を「胃拡張」といいます。大型犬に良くみられ、食後数時間ほどで急に発症する事が多く処置に遅れると大変危険なものとなっています。
吐いた後ぐったりしている
嘔吐をした後にぐったりとして元気が無い時はキケンなサインかもしれません。といっても人間でも吐いた後はぐったりとしてしまうので、ぐったりの基準は難しいですが下記を参考にしてください。
嘔吐後にぐったりしているのは、膵炎や胃拡張や胃捻転などの可能性があり、特に犬の膵炎は急性のものが多く、多臓器不全やショックを起こし命を落とすこともあります。
「ぐったりしてる」と見極めるポイントとして
- 呼んでも反応が無い
- 立つことが中々出来ない
- 目がうつろ
- いつもと様子が明らかに違う
といったものがあります。
一緒に下痢も併発
嘔吐と一緒に下痢気味の場合はさらに注意が必要です。下痢はストレスや食べ過ぎが原因だとなりやすいのですが、一緒に起きると寄生虫や腫瘍・内臓系の病気が原因の可能性が高まります。
それ以外だとウィルス性疾患が原因での嘔吐と下痢の併発は特に注意しましょう。ワクチンを接種していれば安心ですが、もしワクチン未接種だと最悪1~2日で命を奪われてしまう事もあり大変恐ろしいものです。
震えがある
嘔吐後に震えている場合は中毒症状の可能性があります。犬にとって有害となる食べ物(ネギやチョコレートなど)を食べてしまったり、農薬や殺虫成分がなんらかの形で体内に入った時に見られる症状です。
それ以外にも胃捻転の可能性もあり、胃捻転になると胃の内容物が発酵してガスが溜まり、臓器の圧迫や血流の悪化などを引き起こします。
予防接種を受けていない場合は感染症の可能性も考えられます。犬がかかる感染症はワクチンを接種していればほとんどを予防することが出来るので、事前に接種をしてかからないようにしましょう。
血が混じる嘔吐から考えられる愛犬の病気や原因
吐いた物の色や吐いた後の愛犬の様子を見る事で、なにが原因でどんな可能性があるのかが分かってもらえたと思います。
重要なことは血が混じった嘔吐は病院にすぐに行くことです。そのうえで血が混じるような嘔吐をした場合にはどんな病気があるのかを紹介していきます。
これが全てではないですし、知ったからと飼い主さんに出来ることはありません。ですがどんなものがあるのか知るのも一緒に暮らしていくうえで大切です。
- 歯や口腔内が原因
- 呼吸器系の異常
- 消化器系の異常
歯や口腔内が原因
人間と同じく犬にも歯周病があり、3歳以上の犬の8割が歯周病とも言われるほどです。歯垢が歯石に変わるのもとても速く、更にその歯石に歯垢が着きやすいと悪循環が起こります。
歯周病が重症化すると、口腔内だけでなく各臓器に細菌などが行き渡ってしまい悪影響を及ぼしかねません。それが原因で嘔吐を起こし血が混じることになります。
呼吸器系の異常
のどや鼻などの呼吸器の異常も原因の一つです。重度の鼻炎になっていたり鼻腔内に腫瘍が出来ていたりすると、血が喉へと逆流し血が混じる嘔吐になることも。
また肺や気管支から血が出る事もあり、その場合は喀血になります。いずれにしても血を口から出すことは生き死ににかかわる可能性があるので注意をしましょう。
消化器系の異常
食道や十二指腸などの消化器系や、胃腸などが炎症を起こすことで粘膜からの出血の原因になります。その時の嘔吐物が薄いピンク色で少量であればそこまで問題は無く、様子見で大丈夫です。
症状が進行すると鮮血になり、吐く量も多くなるので注意が必要です。それ以外だと、消化器系にガンや腫瘍が発生すると嘔吐したものに血が混じることがあります。
犬が血の混じる嘔吐をしたけど元気にしてる!油断しないで…
突然の血の混じった嘔吐をしたけど、その後でもケロッと元気にしていることもあります。「とくに変わった様子もないし、様子を見ても大丈夫か…」と思ってしまうのは間違いです。
元気にしてても急変し、その後突然死してしまうケースもあります。消化器官・胃・腸・腎臓・膵臓等々…原因は様々ですが、外傷と違って目に見えない体内なので症状が進行していることがほとんどです。
持病を持っているとそこから推測が出来たりもしますが、突然死の原因を明確にするのに解剖をするしかない場合も。元気だからと油断せず先生に相談をしましょう。
犬の嘔吐物の処理はお早めに
嘔吐したものを放置しておくと、舐めたり食べてしまう事もあります。さらに吐いた場所によっては染みになったりもするので、出来るだけ早く取り除きましょう。
順番としてまず固形物を取り除き、固く絞った雑巾などで液体を拭き取ります。次に中性洗剤を雑巾に付けて拭き、最後に洗剤を拭き取れば完了です。
ペット専用の掃除用スプレーなら、愛犬が舐めても大丈夫な成分が使われてるので安心して使えますね。消臭剤も臭いが気になる方は使用するのも良いでしょう。
嘔吐物の掃除をする際は素手で行うのは止めましょう。もしかしたらウィルスなどが原因の可能性があるので、使い捨ての手袋などを装着して行うといいですね。
まとめ 嘔吐の色で判断。血が混じる嘔吐は危険!
吐くという行為には「嘔吐」と「吐出」の2種類があり、血が混じる嘔吐も「喀血」と「吐血」の2種類があります。どちらも内容物と吐いたタイミングである程度は見極める事が出来ます。
嘔吐の原因も、食事量や誤飲・病気であったり、精神面からくるものであったりと様々です。血が混じる嘔吐は異物が口内に刺さっている可能性もありますが、ほとんどは病気の可能性が高いです。
血が混じっていなくても、吐いた後にぐったりしたり震えたりと見たこと無い状態になる事も。吐く行為自体は生理現象なのでよくある事ですが、血を吐くことは何らかのSOSが出ているサインです。
口内の問題もありますが、中には命に係わる重大な事もあります。異変を感じたら手遅れにならないよう動物病院に相談をしましょう。早めの行動をとることが大切な家族と永く元気に過ごす秘訣になります。